付注3-7 税制・社会保障制度のモデルについて
所得再分配効果の経年変化を観察する場合は、調査時点間の税・社会保障制度の改正も考慮する必要がある。そこで、先行研究(西崎・山田・安藤(1998)等)に倣って、国民生活基礎調査及び所得再分配調査の個票を用いたマイクロシミュレーションによってモデル化された税制・社会保障制度の下でのジニ係数を試算した。
世帯人員数で調整した等価再分配所得によるジニ係数を試算するために、個人の所得に応じた税・社会保障負担額を推計した後、世帯単位の再分配所得を推計した。個人単位での推計においては、個票から得られる情報を基に属性や所得金額を推計して、モデル化した税率・社会保険料等から負担額を推計することとする。税については、所得税及び個人住民税をモデルとしている。社会保障給付については、個人の履歴が必要になるなど個票から推計する事が困難であると考えられるため、個票から得られる給付額を用いた。
具体的には以下の手順によって推計した。
1.世帯・個人の属性
扶養親族の人数や就業状態など、所得控除や適用する保険料率の種類に関わる属性を推計する。
2.所得金額
国民生活基礎調査の個票データから、所得金額を以下の式により推計する。
所得金額= | 雇用者所得+公的年金・恩給+事業所得+農耕・畜産所得 |
+家内労働所得+財産所得(家賃・地代の所得、利子・配当金) | |
-給与所得控除-公的年金等控除 |
3.社会保険料負担額
適用する社会保険制度に応じて、モデルによる保険料率等を用いて社会保険料負担額を推計する。
4.課税所得
所得税・個人住民税ごとに配偶者控除、生命保険料・損害保険料控除等の控除を適用して所得金額から課税所得を推計する。
5.税額
所得税・個人住民税ごとにモデルによる税率を用いて税額を推計する。