付注1-6 構造的・循環的財政収支の推計について
1.構造的・循環的財政収支の推計方法の考え方
景気変動の影響を受ける(すなわち、自動安定化機能を持つ)歳入・歳出項目として、歳入面では、所得税、法人税、間接税、社会保障負担、歳出面では、雇用保険支出を取り上げ、景気循環要因を取り除いた構造的財政収支を推計する。
まず、経済がその潜在GDP水準を実現した際の財政収支には、景気循環要因はゼロであると考える。ここで用いる潜在GDPは、過去のトレンド的な労働量と資本量を投入して持続的に生産可能な値である。潜在GDPが実現されていると仮定した場合に、年度毎の税収及び政府支出がどのような値になるかを、現実の税収及び政府支出から、潜在GDPと現実のGDPの比率と、それぞれの税目及び政府支出についてのGDP弾性値を考慮して計算し、構造的財政収支を導出する。
構造的財政収支(推計値)
=トレンドGDPに対応する歳入-トレンドGDPに対応する歳出
具体的には、
各税目の収入を合計し、政府支出を引くと、
なお、政府支出のGDP弾性値(β)は雇用保険支出の循環的変動のみを反映すると考え、雇用保険支出のGDP弾性値を当該支出が政府支出に占めるウエイトでかけたものを用いている。雇用保険支出の歳出全体に占めるシェアが非常に小さいことを踏まえると、政府支出のGDP弾性値は、概ねゼロと近似できる。
循環的財政収支は、現実の財政収支から構造的財政収支(推計値)を差し引くことで求められる。
循環的財政収支=財政収支の実績値-構造的財政収支(推計値)
2.構造的財政収支の推計に必要な弾性値について
景気変動の影響を受ける歳出・歳入項目の実質GDP弾性値は、それぞれ以下の値を用いた。
実質GDP弾性値 | |
所得税 | 1.20 |
社会保障負担 | 0.67 |
法人税 | 1.30 |
間接税 | 1.00 |
政府支出 | 0 |
(注)上記の弾性値は、平成17年度年次経済財政報告において推計したもの。所得税については2004年度の制度、社会保障負担については2004年度の標準報酬月額表(10月の厚生年金保険料率引上げ前)に基づき試算した。推計方法等は、西崎・水田・足立(1998)「財政収支指標の作り方・使い方」エコノミック・リサーチNo.4、経済企画庁経済研究所編、1998年11月を参考にした。