平成17年度年次経済財政報告公表にあたって
2001年の内閣府発足以来、経済財政白書(年次経済財政報告)は従来の経済白書から衣替えをして、5回目の刊行を迎えました。小泉内閣は、「改革なくして成長なし」との認識の下、各般の構造改革を進めてまいりましたが、白書では構造改革の進展と日本経済の現状と課題について、きめ細かく分析してまいりました。
これまでを振り返ると、2002年初から続く景気回復は、追加的な政府支出に頼ることなく3年半に及んでおり、現在も日本経済は民需を中心に緩やかな回復局面にあります。この間、2002年10月に発表された金融再生プログラムに掲げられた3年間で主要行の不良債権比率を半減するとの目標にもとづき、不良債権処理は順調に進み2004年度末には3%を下回るなど、目標の早期実現が達成されました。また、金融機関の不良債権処理の進展とともに、企業の雇用・設備・債務における過剰もほぼ解消しました。この結果、企業の体質が強化され、それが雇用の改善を通じて家計部門にも好影響をもたらしています。
デフレが緩やかながら継続する中で、景気回復の勢いが2004年後半からやや鈍化し、また地域の回復力にばらつきがみられるなどの課題は残っていますが、政府支出に頼らず民需中心の自律的回復の姿が実現しつつあるという意味では、日本経済は「バブル後」と呼ばれた時期を確実に抜け出したと言えるでしょう。バブル後の長期低迷を脱した現在、持続的な成長のためにも、負の遺産を清算するための「守りの改革」から、新しい成長の姿をつくるための「攻めの改革」へと転じる時に来ています。
このような問題意識に基づいて、本白書では「攻めの改革」を進める基本的な考え方である「官から民へ」について、その現状と課題を明らかにしています。郵政民営化を始め、「民でできることは民で」を徹底し、加えて、市場化テストを含め「官から民へ」の開放を包括的に進めることで、小さな政府を実現し、民間の持つ潜在的能力を十分に開花させることが重要と分析しています。また、2007年には、日本全体の人口が減少に転じ、戦後生まれの団塊世代が定年退職の年齢に到達します。こうした人口動態の変化が、家計の消費・貯蓄行動や労働市場等にどのような影響を及ぼすのかを事前に予測し、それへの準備を進めていくことが必要と提言しています。
本白書により、日本の経済と財政に対する認識と、小泉内閣の進める構造改革の狙いについて国民の理解が深まり、日本経済が抱える課題の解決に貢献できれば幸いであります。
平成17年7月
経済財政政策担当大臣
竹中平蔵