第3章 グローバル化の新たな課題と構造改革
第3章のポイント
第1節 日本経済とグローバル化
● グローバル化とは、資本や労働力の移動が活発化し、貿易や投資が増大することによって世界における経済的な結びつきが深まること
● 90年代以降を中心とするグローバル化の4つの特徴は、為替レートの円高基調、貿易・投資面での東アジアの重要性の高まり、我が国の国際的な金融・資本取引の低迷、我が国のグローバル化は欧米諸国に比べると緩やかなこと
第2節 グローバル化による経済的影響
● 円高の輸出減少効果と輸入増加効果がともに高まり、その黒字削減効果は上昇
● 企業の海外生産の展開によって、アジア地域では同一製品の製造過程で垂直的な分業(工程間分業)が進展。他方、負債状況の悪化や資本コストの上昇等から、アジアから撤退する日本企業が増加
● 家計からみると、グローバル化のメリットは「広く薄く」、デメリットは「一部に集中」。安価な輸入品の増加は生計費を軽減。輸入の増加が一部業種の雇用等に影響を与えたが、グローバル化による内需の増加は雇用にプラスの効果
● 地域経済においても外資系企業の立地、観光業の振興、農作物の輸出等を通じグローバル化への取組みは前向き。地域の特性を活用した地域主導の改革を開始
第3節 経済連携の推進
● FTA(自由貿易協定)は、90年代以降世界において顕著に増加。貿易の自由化のみにとどまらず、投資、競争政策等の分野にまで対象が拡大。その効果は、安価な輸入品による消費者メリットの増加、生産性の高い部門への経済活動のシフトが期待
● 国内構造改革との一体的推進を通じた東アジアとの経済連携への取組み強化が重要
第4節 グローバル化の便益を引き出す構造改革
● 農業は、大幅な労働力の減少、農地の減少と土地生産性の停滞に直面。意欲ある担い手の育成、農地の有効利用、高付加価値化等の改革を進め、国際競争力を高める必要
● 我が国への対内直接投資残高は近年増加しつつあるものの依然として低水準。これには、マクロ経済状況、経済・社会インフラ、規制などが影響
● 外国人労働者は、専門的・技術的労働者の他、日系人等の定住者も増加傾向。前向きに総合的な検討が必要
● 今後の税や社会保障負担増については、経済活力低下のおそれに留意
● グローバル化に対応した国内構造改革と競争政策の充実・強化が必要
● グローバル化の便益を引き出す経済基盤を築くため、構造改革の取組みを強化
第3章 グローバル化の新たな課題と構造改革
日本経済は、構造改革の進展とともに回復を続けている。2002年からの景気回復において輸出が果たした役割は大きい。長い目で海外との経済関係をみると、直接投資を通じた我が国とアジア諸国との新たな生産関係の構築、日々の生活において実感する輸入品の増加など大きな変化が生じている。このように日本経済は海外経済と常に密接な関係をもって発展している。
本章では、海外経済との関係がより密接になることをグローバル化の進展ととらえ、それが日本経済にどのような課題を提起しているのか、その課題に対処していくために必要となる構造改革は何かを考察する。第1節では、日本経済のグローバル化の特徴を明らかにする。第2節では、企業、家計、地域が行った対応や受けた経済的影響について、為替レートと貿易、海外生産、雇用等の観点から分析する。第3節では、東アジア地域(1)との経済連携の在り方を展望し、その意義を検討する。第4節では、グローバル化の便益を引き出すための国内の構造改革について、農業、対内直接投資、外国人労働等の分野を中心として論じる。