第2節 金融の再構築(21)
(21) 本来、貸出債権は指名金銭債権であることから、譲渡禁止特約がなければ譲渡人と譲受人との合意のみによって譲渡可能であり(民法第466条第1項)、債務者への対抗要件としては、譲渡人から債務者への通知、又は債務者の承諾が必要であり、さらに第三者への対抗要件としては、この通知又は承諾が確定日付のある証書によりなされるか、又は債権譲渡登記がされることが必要である(民法467条、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例に関する法律2条)。2003年3月に公表された貸出債権市場協議会の報告書によると、貸出債権の流動化に向けた問題点として、(i)借入企業による債権譲渡承諾の問題、(ii)金融機関の守秘義務と投資家に対する情報開示の問題、が指摘されている。また、(iii)債権譲渡が周囲に借入企業の信用リスクの高まりと認識されることへの懸念や、(iv)返済先の変更による取引序列の変動や事務負担の増大などが、具体的な障害として挙げられている。その上で、例えば、譲渡承諾については、借入条件面(スプレッド)での優遇や査定・行内格付の上方修正等、借入企業にとって譲渡承諾しやすい環境整備を図ること、また、情報開示については、借入企業の同意なしに開示可能な情報(パブリック情報)と個別に同意を得なければ開示不可能な情報(プライベート情報)を明確化すること、等が必要であると指摘している。