はじめに

我が国の景気は、輸出の増加と生産の下げ止まりを背景に底入れをした。その後、底入れの影響が徐々に経済全体に波及しつつあり、景気は回復に向かおうとしている。その回復が自律的で力強いものになるか否かは、民間需要の動向にかかっている。しかし、1990年代以降の景気循環においては、バランスシート調整等に伴う下押し圧力によって、民間需要は低迷を続け、景気回復力は脆弱なものにとどまってきた。

景気の脆弱性を取り除き、持続的な経済成長を実現するためには構造改革が必要である。その一環として、税制改革が喫緊の課題となっている。政府は、望ましい税制の3原則として掲げられる「公平・中立・簡素」を時代の要請に応じて「公正・活力・簡素」と理解しつつ、「21世紀にふさわしい包括的かつ抜本的な税制改革を行う」ことを目指している。税制改革は、持続可能な財政を築き、経済の活性化を実現する上で重要な意味を持っている。それを踏まえて税制改革をどのように実現するかが課題である。

経済活性化は、中長期的に日本の活力を回復し、国民生活の持続的な向上を図るために達成しなければならない課題である。特に、日本経済の生産性の上昇率が、アメリカとは対照的に90年代後半には低下していることを踏まえ、生産性の上昇率を高めるための取組を強化する必要がある。それは、企業経営の刷新、資源配分の改善、研究開発の充実など広範な分野における課題の解決と密接に関連している。

本年度の「年次経済財政報告-経済財政政策担当大臣報告-」は、以上のような問題意識の下で分析・検討を加えている。

第1章では、景気回復力について展望している。最初に、景気の現状と今回の景気回復局面の特徴を整理し、最近の景気循環と並行して進行している一般物価と資産価格の両面におけるデフレについて分析している。そのうえで、企業、銀行、家計の各部門が現状においてどのような調整や対応を迫られているのか、あるいはマクロ経済政策は経済にどのような影響を及ぼしているのかを分析している。最後に、こうした状況を踏まえて、景気の先行きに関して期待されるシナリオとそのリスクを考察している。

第2章では、包括的かつ抜本的な税制改革の前提として、税負担の現状について整理している。具体的には個人所得課税と法人所得課税のそれぞれについて、マクロ、ミクロからのアプローチや国際比較など様々な観点から税負担の構造を分析している。こうした分析は、日本経済の活力を支える新しい税制を設計する際の基礎的資料を提供するものである。

第3章では、経済活性化のための課題について検討している。ここでは、最初に、しばしば指摘される「産業空洞化」懸念の背景について検討することを通じて、我が国の経済活性化の必要性を浮き彫りにしている。その上で、企業経営の効率化、資源配分の効率化、研究開発の効率化の各分野について、経済活性化の現状と今後の課題を検討している。最後に、構造改革が達成された後において実現される我が国の経済構造の将来像について論じている。

以上のような分析・検討を通じて、日本経済の現状と課題を明らかにし、日本経済が進むべき道を示すことに少しでも寄与することが、本年度の報告の目的である。