はじめに
世界経済は、原油価格の上昇やユーロ安といった不安定要因を抱えてはいるものの、アジア通貨・金融危機後の状況に比べて総じて良好な状態が続いている。原油価格の大幅な上昇に伴いエネルギー価格に高まりはみられるものの、主要国では物価は総じて安定している。多くの国・地域で景気拡大が続いている。インターネットや携帯電話といったIT利用が急速に普及しており、ITの動向抜きに世界経済は語れなくなっている。
グローバル化やIT革命の進展に伴い、企業は、雇用コストの削減を迫られる一方で、より高度な知識・技能を有する労働者を求めている。労働者は、多様な就業形態を選ぶことができるようになる一方で、就業機会を拡大し所得を向上させるために知識・技能をどのように高めるかという問題に直面している。各国の政府は、雇用を拡大するとともに経済発展を支える高度な人材確保の必要に迫られている。このように知識・技能の向上は、個人や個別企業にとっても経済政策の上からも極めて重要な課題になっている。
本年度の世界経済白書は、このような問題意識に沿って、諸外国の事例の紹介と分析を行っている。第1章で世界経済情勢の年間レビューを行い、地域ごとに主要なトピックをとりあげる。第2章では、グローバル化やIT革命が進展する中で、労働市場がどのように変化しているか、また、知識・技能を向上させるために、個人、企業および政府がどのような取り組みを行っているかについて検討を行う。