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第4節 まとめ

本章では、中国の発展及び成長力低下が世界経済に与える影響という観点から、新興国の成長力について、今後の世界との連関を中心に展望を試みた。

第1節では、中国をはじめとする新興国が躍進してきた姿を俯瞰した。また、世界金融危機後に成長テンポに鈍化がみられる背景として、中国の減速や国際金融の不安定性などの中で、グローバル化の鈍化があることをみた。他方、こうした中でも一部の新興国には中国の発展に続くような動きが散見されていることもみた。

また、第2節では従来の日本、韓国から中間財を輸入して中国から最終財を欧米諸国に輸出するという国際分業体制から、中国から中間財、最終消費財をほかの新興国に輸出するという垂直分業にシフトしつつあるとの結論を得た。また、こうした動きの中で、中国に続く新興国群として、インドや、インドネシアを始めとする東南アジア諸国が中国の果たしていた役割を引き継いでいく姿もみた。

第3節では、グローバル企業に焦点を当てて、以上のような世界経済の動向を更に詳細に分析した。サプライチェーンの変化に伴い、グローバル企業は新興国で幅広く売上、雇用を増やす一方、海外資産やR&Dは一部で先進国回帰の兆しもみられることが確認できた。

新興国が持続的な成長を続けていくためには、グローバル化や直接投資等の外的要因に加え、金融部門の機能向上など経済・社会制度の整備も重要である。これは、中所得国の罠を回避し、経済発展を着実に進めるという観点からも望ましい。

また、目下の課題である中国経済の役割変化とサプライチェーンの変化に適切に対処し、活力を最大限発揮させるためには、産業構造の高度化を進めることが重要である。その際は、まず生産資源を十分に活用し、インフラや制度の整備を進めることが鍵となる。これは、各国の経験から得られる教訓である。

新興国経済の動向は我が国を始め、先進国の今後の成長や商品市場にも大きな影響を与える。新興国が輸出の高度化等を通じて安定的な成長を続けるとともに、魅力のある投資先であり消費市場であることで、世界各国との相互利益の推進ができるかが、世界各国にとっての課題であり目標であるといえよう。

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