2.経済見通しに係るリスク要因
見通しのリスクバランスは下方に偏っており、特に欧州政府債務危機の深刻化には十分な警戒が必要である。
(1)欧州政府債務危機の深刻化
11年後半から12年初めにかけて第二次ギリシャ支援の決定や安全網の整備などにより欧州政府債務危機はやや落ち着きを見せつつあったが、南欧諸国等では景気低迷が続いており、財政再建が予定どおり進捗するかどうかは予断を許さない状況となっている。特に、12年5月のギリシャ総選挙で財政再建を進めてきた連立与党が過半数割れしたことやスペインの金融機関の状況と財政に対する先行き懸念が高まっていることなどにより、南欧諸国等に対する市場の懸念は依然として払しょくされていない。また、今後市場参加者が好感しないような憶測が広がったり、実際にそのような政治的イベントが起こった場合には、先行き不透明感が一層高まるおそれもある。
欧州政府債務危機が再び深刻化すれば、金融資本市場が変動するとともに、ユーロ圏銀行の経営不安や信用収縮による金融システム不安が起こるリスク、ヨーロッパ向け比率が高いアジア等の国・地域の輸出が更に鈍化するリスクがある。その場合、ヨーロッパの景気低迷にとどまらず、世界経済全体に大きな影響があり得る。
(2)中国経済の更なる減速
拡大テンポが緩やかとなっている中国経済については、各種政策効果等による景気下支えが期待されるものの、特にヨーロッパ向け輸出の更なる鈍化や投資の伸びの更なる鈍化のリスクがある。投資については、不動産価格抑制策の継続による価格急落などのリスクと抑制策が緩和された場合に不動産市場が再び過熱するリスクが併存している。いずれのケースでもリスクが発現すれば中国経済の更なる減速に繋がるおそれがあり、その場合には中国と経済的な結びつきの強い韓国・台湾・ASEANをはじめ世界経済の成長が下押しされる可能性がある。
(3)原油価格等の再上昇
12年春以降、イラン情勢の落ち着きや、ギリシャ財政の先行き不透明感の高まりによるリスク・オフにより、原油価格は低下に転じているが、地政学リスクが一層深刻化すれば、原油価格が再び上昇するおそれがある。また、先進国では金融緩和が継続され、加えて新興国でも緩和的政策に転じており、過剰流動性が投資先を求めて原油市場その他の国際商品市場に流れ込む可能性も考えられる。原油価格等の再上昇が消費者物価の上昇をもたらせば、家計の購買力が失われ個人消費が下押しされるおそれがある。
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