2.金融資本市場の動向:いったん落ち着いたものの再び緊張が高まりつつある
11年後半以降、欧州政府債務危機の深刻化からリスク・オフの傾向が強まっていた金融資本市場は、第二次ギリシャ支援の決定やアメリカ経済の回復期待から、年明け以降、沈静化していた。しかしながら、ギリシャにおいて12年5月の総選挙で財政再建を進めてきた連立与党が過半数割れしたことから同国の政府債務問題の先行き不透明感が増す中で、市場はリスク・オフの状況に再び戻りつつある。
(1)株式・債券・為替市場
11年後半以降、欧州政府債務危機の深刻化を背景にリスク・オフの傾向が強まっていた株式市場は、12年に入り、第二次ギリシャ支援や安全網の強化、ECBによる3年物資金供給オペ(LTRO)の実施等の取組により欧州政府債務危機解決の期待が高まったことや、アメリカ経済の回復期待を要因として、リスク選好が強まった。その結果、株価の上昇や、米・独国債等の安全資産の需要低下、米ドルやスイスフラン、円の減価などの動きがみられた。しかし、12年春には、スペイン財政に対する懸念や中国経済の減速懸念、さらにはギリシャの政治情勢の不透明さなどから、リスク・オフになる局面もみられている(第1-1-21~23図)。
第1-1-21図 主要国株価の推移:改善傾向だが12年春にはリスク・オフの動きも
第1-1-22図 主要国の債券市場:安全資産の需要がこのところ増加
第1-1-23図 為替レートの推移
(2)原油市場
原油市場では、イラン情勢の緊迫化による地政学リスクの高まりや、欧州政府債務危機への懸念の後退及びアメリカ経済の回復期待によるリスク志向の高まりから、原油価格が上昇基調にあったが、ギリシャ情勢を背景とするリスク・オフから12年春以降は低下に転じている(第1-1-24図)。
第1-1-24図 原油価格の推移