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第1章 歴史的転換期にある世界経済:「全球一体化」と新興国のプレゼンス拡大

  世界経済は、20世紀後半から、貿易・投資の自由化や交通・通信手段の発展により、各国・地域を分断していた国境の垣根が低くなり、モノ・カネ・ヒトの国境を越えた移動が活発化していた。こうした傾向は、1990年の東西ドイツ統一、91年の旧ソ連崩壊による冷戦構造と東西ブロック経済の終結、更には90年代の情報技術(IT)革命により加速し、21世紀に入ってからは、各国・地域の市場が全世界的に一体化する、いわば「全球一体化」(1)とも呼ぶべき現象がみられるようになっている。また、「全球一体化」の中で、急速な工業化により高成長を遂げる国々が次々と現れ、こうした新興国(2)経済の世界経済におけるプレゼンスが急速に拡大している。これは、例えば、先進国企業の投資を通じた技術の伝播等、「全球一体化」の寄与するところも大きい。
  目下、世界経済は、こうした「全球一体化」と新興国経済のプレゼンス拡大という、歴史的にみても大きな二つの構造変化が進行しており、我が国の行く末を論じる上でもこの流れを軽んじることは許されない。
  本章では、こうした構造変化が「財市場」、「資本市場」、「労働市場」でどのように進んでいるか、更に世界金融危機(3)の発生後、こうした傾向が加速しているかどうか分析し、今後の経済政策運営への示唆を探る。


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