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第3章 世界経済の見通しとリスク

第1節 アメリカ経済の見通しとリスク

1.見通し(メインシナリオ)―10年に持ち直し

   アメリカでは、景気は後退しており、金融危機と実体経済悪化の悪循環により、引き続き深刻な状況にある。しかしながら、足元では一部の経済指標において、減少のテンポが緩やかになってきている。
   先行きについては、減少のテンポは徐々に緩やかになっていくものの、金融危機と実体経済悪化の悪循環が続いていることから、09年中はマイナス成長が続く可能性が高い。その後は、これまでの金融システム安定化策や景気刺激策の効果により、金融市場が徐々に安定化し、住宅市場の調整も終わることを前提とすれば、10年に景気は持ち直すものと見込まれる。ただし、今回の景気回復局面では、家計のバランスシート調整が続き、景気回復のけん引役となるべき個人消費の回復が緩やかとなると見込まれることから、景気回復のペースは緩慢なもの(1%程度の成長)となる可能性が高い。
   ちなみに、国際機関による実質経済成長率見通しの平均的な見方をみると、09年中はマイナス成長が続き、09年全体としても大幅なマイナス成長となることが見込まれている。その後、10年も景気回復のテンポは非常に緩やかであり、10年全体でもほぼゼロ成長となることが見込まれている。他方、民間機関の見通しでは、09年の後半にはプラス成長に転じ、10年も2%弱の成長となるなど、国際機関とは大きく異なった見方となっている(第3-1-1図)

   以下、個別の需要項目について概観する。

(i)個人消費
   雇用情勢の悪化、家計のバランスシート調整、信用収縮の影響が続くことから、徐々に減少のテンポは緩やかになるものの、09年中はマイナス、もしくは、ゼロ近傍の伸びとなると見込まれる。その後は、金融市場が安定化し、消費者への信用の流れが回復することを前提に、2010年には回復に向かうとみられるが、家計のバランスシート調整の影響等は残ることから、1%程度の緩やかな伸びにとどまると考えられる。

(ii)住宅投資
   足元では、住宅需要に回復の兆しがみられることから、今後は、住宅在庫が徐々に縮小に向かうと見込まれる。このため、住宅着工も、09年後半には底打ちし、10年前半には、住宅投資も下げ止まると見込まれる。しかしながら、中古市場に流入する差押さえ物件が引き続き増加していることから、底打ち後も回復のテンポは緩慢なものにとどまると考えられる。

(iii)民間設備投資
   信用収縮、企業の収益悪化、需要の大幅な落ち込みによる生産の急減から、09年中はマイナスの伸びが続くとみられる。その後、10年半ばには、内外の需要の回復から、プラスに転じるものとみられる。

(iv)外需
   09年中は、内需の低迷及び世界的な景気後退の影響から、輸出入とも減少、もしくは、極めて低い伸びが続くと見込まれるが、GDPに対する寄与度では、傾向として、若干のプラスとなるとみられる。その後は、10年には、国内需要及び世界需要が緩やかに持ち直すにつれて、輸出入とも徐々に回復していくと見込まれる。


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