第1章 先進国経済:金融危機による景気後退の深刻化 |
第2節 アメリカの景気後退の深刻化と金融危機の長期化
2007年夏以降のサブプライム住宅ローン問題に端を発する住宅金融市場の混乱に加え、エネルギー価格高騰等の影響を受けた個人消費の減速等から内需は落ち込み、アメリカ経済は同年12月より景気後退局面に入っている。08年前半には、ドルの減価等を背景とする輸出増加や経済対策に基づく個人消費の下支えなどにより景気の持ち直しの動きがみられたものの、同年9月のリーマン・ショックを契機に金融資本市場は極度の混乱に見舞われ、「100年に一度」と形容されるまでの金融危機に陥った(1)。さらに、金融資本市場の混乱は実体経済にも波及し、アメリカの景気後退を一層深刻なものとしている。
08年秋以降、各種の金融安定化策、景気刺激策が次々と打ち出され、景気回復に向けた精力的な取組が行われている。今後はこうした政策の効果が徐々に現れてくるものと考えられるが、09年は大幅なマイナス成長、10年もゼロから1%の成長にとどまる可能性が高く、金融危機と実体経済の悪循環により景気後退が長期化するものと見込まれる。
本節では、08年秋以降のアメリカ経済の現状を概観した上で、今後の景気回復に向けた動きを探る上で重要な4つのポイント―金融危機と実体経済の負の連鎖構造、雇用情勢、消費動向、金融安定化・景気刺激策とその効果―を取り上げ、考察を加える。