第1章 2007年の経済見通し |
2.アジア
2006年は中国を中心に景気拡大が続いた。07年は、中国では引き続き高い成長が続き、アジアのその他の国・地域では、世界経済の減速を受け輸出が鈍化し景気拡大がやや緩やかになると見込まれる。
(1)北東アジア(中国、韓国、台湾、香港)
06年の北東アジアの経済成長率は8.6%となった。06年後半にはIT関連財輸出の鈍化等がみられたものの、引き続き中国を中心に景気は拡大した。
07年は世界経済の減速の影響を受け、輸出が鈍化するとみられるものの、7.8%程度の成長になると見込まれる。
●高成長が続く中国
中国の06年の成長率は10.7%と、内需、外需ともに拡大し、4年連続の二桁の高成長となり、07年1〜3月期も前年比11.1%の成長となった。引き続き投資と輸出が景気のけん引役となっている。固定資産投資(都市部、名目値)は06年前半に前年比30%前後の伸びが続き、投資過熱感が高まった。そのため、直接規制や金利引上げ等の「マクロコントロール」が強化され、06年後半以降やや伸びが鈍化したものの、07年に入り再び伸びが高まっている。輸出額は同20%台の高い伸びが続き、06年の貿易黒字は約1,774億ドルと過去最高額となった。07年については、中国当局がマクロコントロールによる引締め政策を継続していることや、輸出が鈍化するとみられることなどから、成長率はやや鈍化し、9.7%程度になると見込まれている。ただし、足元での固定資産投資、生産等の高い伸びを考慮すると上振れする可能性もあると考えられる。
●緩やかな景気拡大が続く韓国、台湾、香港
06年の韓国経済は、ウォンの増価にもかかわらず良好な世界需要等を背景に、IT関連財や船舶、自動車を中心に輸出が拡大した。また、民間消費や設備投資等の内需も比較的堅調な伸びをみせ、06年は5.0%の成長となった。一方、06年後半には内外需ともに伸びが緩やかになり、輸出についてはIT関連財の在庫調整やウォンの増価等、民間消費については所得の伸び悩みやこれまでの金利の上昇による家計債務負担の増加等が懸念されている。
07年は、年前半に輸出の伸びは鈍化するとみられるが、後半には世界経済及びIT関連財需要の回復が期待され、通年では4.4%程度の成長になると見込まれる。
台湾では、年前半を中心にIT関連財の輸出が好調だったことにより、06年の成長率は4.6%となった。07年は輸出の伸びが緩やかになるとみられるものの、民間消費等の内需が下支えすることなどから、4.0%程度の成長になると見込まれている。
香港の06年の成長率は6.8%となった。07年は輸出の鈍化等から5.0%程度の成長になると見込まれている。
(2)ASEAN:シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン
ASEAN各国は、輸出が高い伸びを示したことなどから、06年の成長率は5.8%となった。一方、07年は世界経済の減速により輸出が鈍化するとみられ、成長率は5.3%程度と見込まれる。
●景気は総じて拡大している
シンガポールでは、06年後半にかけてIT関連財輸出の伸びが緩やかとなったものの、設備投資等の内需が拡大し、06年は7.9%の成長となった。07年は輸出が鈍化するとみられ、成長率は5.3%程度と見込まれる。
タイでは、輸出が比較的堅調に推移する一方、民間消費や民間投資等の内需の落ち込みから、06年の成長率は5.0%となった。07年は輸出の鈍化等から、4.3%程度の成長と見込まれる。
マレーシア及びフィリピンでは、06年は景気は拡大した。07年は外需が鈍化するとみられ、成長率はやや鈍化すると見込まれる。
インドネシアでは、06年の成長率は5.5%となった。07年は物価の安定及び金利引下げの影響等から、成長率はやや加速すると見込まれる。