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第1章のポイント

1.先進諸国の雇用情勢と近年の雇用戦略

  1. 先進諸国の雇用情勢は緩やかに改善しており、2000年代前半におけるOECD主要国の就業率をみると、北ヨーロッパ諸国や英語圏諸国は比較的高い。一方、大陸ヨーロッパ諸国や南ヨーロッパ諸国の就業率は依然低く、高い失業率と長期失業の解消も課題となっている。
  2. 若年者、女性、高齢者の雇用情勢をみると、改善もみられるものの、それぞれの就業率は全体を下回っている。特に若年者では失業率が高いままであり、女性、高齢者では労働参加率が低いなど、依然課題が残っている。
  3. OECDやEUの雇用戦略では、 (1)働き手の減少が予測される中で、労働参加や就業を阻害している要因の解消等を通じて、労働参加を高めながら就業を増やすこと、(2)世界の競争激化等の変化への対応といった点に重点が置かれている。

 

2.より多くの人が活躍できる労働市場の構築

  1. (1) 就労への意欲阻害要因の解消と就業能力向上のための支援: 英国の若年者向けニューディール政策は、インセンティブと就業能力向上の後押しを支援の中心に据えていること、カウンセリングの充実等を特徴とし、長期失業への効果等おおむね肯定的な評価を得ている。また、アメリカ・英国では就労インセンティブを後押しするための就労を条件とした税額控除の仕組みが導入され、配偶者の無い母親を中心に就労促進効果がみられる。こうした政策は、連携や整合性を図ることでより大きな効果を持つことが期待され、幾つかの国では、給付と支援をより密接に結び付ける取組が行われている。また、就労型給付も、他の税や公的給付と整合的なものとなるよう検討することが重要である。
  2. (2) 意欲のある働き手を労働市場に引き付ける環境整備: フランスでは、育児期における働き方等での幅広い選択肢の提供と同時に、フルタイムとパートタイム労働者の均等待遇やフルタイムとパートタイムの転換のための制度が整備されている。EUでは、年齢差別禁止への取組が進められ、包括的であることと、柔軟な制度作りが特徴となっている。意欲ある働き手を労働市場に引き付けるために、多様な選択肢の提供と合わせて、公平、公正を確保するための横断的なルールを整備することが重要であろう。また、フィンランドにおける高齢者の就業への取組は、勤労意欲への働きかけ、能力向上支援、職場環境の整備等総合的なアプローチが特徴の一つとなっている。
  3. (3) 市場メカニズムの活用と安定的な成長による労働需要の増加: 労働需要に影響を与える構造要因として考えられるものをみると、個別の国によるばらつきはあるものの、就業率の高い国では総じて市場の規制(生産物市場規制、サービス市場規制)が緩く、労働保護法制が緩く、税のくさびが小さい傾向にある。また、就業率の伸びが大きかった国では、物価上昇率が低下するとともに、成長率が高まり、また変動も小さくなる中で、失業率が低下し労働参加率が上昇した結果、就業率が上昇した。安定的な経済成長が就業機会の拡大に向けて重要であると示唆される。

 

3.まとめ

  1. 経済や社会情勢の変化の中で、まずは、市場メカニズムを活用した構造面からの競争力の強化と、安定的な経済成長を促す経済運営により、就業機会を拡大していくことが重要である。
  2. そして、より多くの人が活躍できる労働市場の構築という一つの目標に向けて、働き手の意欲阻害要因の解消と就業能力の向上支援、多様な働き方を実現する選択肢の提供、横断的なルール作りも含めた様々な政策に総合的に取り組むとともに、各政策が整合的に行われることが極めて重要である。

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