<2005年の経済>
アメリカ経済は2005年には個人消費の堅調な伸びを中心に、3.5%と04年に比べやや鈍化したものの依然高い成長となった。これはエネルギー価格の上昇やハリケーンの襲来といった負の影響にも関わらず、雇用環境が改善を続けたこと(05年:非農業雇用者数198.1万人)が大きい。なお、10-12月期の成長率は1.7%と7月の自動車販売台数がGM、フォードの販売促進策のために大きく伸びた反動もあって一時的に鈍化したが、基調には大きな変化は見られていない。また、一時過熱も懸念された住宅投資については、年央をピークに軟着陸しつつある。
物価は05年を通して原油価格が過去最高水準を更新する形で上昇し、物価や賃金等を通じた経済全体への影響が懸念されたものの、毎会合ごとに0.25%ポイントずつ計2.00%ポイントの利上げがあった。エネルギーを除いた消費者物価の上昇は今までのところ落ち着いた動きを示し、インフレ圧力の高まりによる景気への影響は限定的なものにとどまっている。
<2006年の経済見通し>
2006年の経済成長率は3%台半ばとなる見込みである(民間機関58社平均3.4%(2006年4月)、 政府見通し3.4%(2006年2月)、議会予算局3.6%(2006年1月))。民間機関の見通しは、半年前(2005年10月時点3.3%)と比較し、ほぼ変わっていない。また、巨額の経常収支赤字を背景としたドルの減価基調を受け、赤字幅はやや縮小するものの、依然として高水準で推移すると見込まれている。物価は前年比2.5%台半ば程度と、前年よりも若干インフレ圧力が高まるとみられる。
<財政政策の動向>
ブッシュ大統領は、2月6日、2007会計年度(2006年10月〜2007年9月)の予算案をまとめ、議会に提出した。歳出抑制型のスタンスをとりつつも、イラク駐留の長期化の影響等から、歳出は07年度で過去最大規模の2兆7,700億ドルとなる一方で、法人税、所得税を中心に好景気による歳入増から赤字は3,542億ドル(GDP比▲2.6%)になる見込みとなっている。
内訳をみると、国防、国土安全保障を除く裁量的支出は0.5%程削減され、裁量的支出全体では前年度比3.2%増となっており、インフレ率見通し(06年会計年度:3.3%)を下回る増加となった。なお、ブッシュ大統領は2009年度までに財政収支赤字を半減させる方針を04年に示しており、07年度予算教書においてもこの目標は期限前に達成としている。
<金融政策の動向>
FRBは2004年6月以降景気拡大を持続させながら物価上昇圧力へも十分配慮するという形で微妙な均衡を維持しつつ、0.25%ポイントずつという慎重なペースで政策金利を引き上げてきたものの、FF金利が4.25%に達した05年12月のFOMCにおいて、「金融緩和の取りやめ」との表現が削除され、金融緩和局面は終了した。
06年に入ってからも引続き0.25%ポイントの引上げは継続されているが、FRBは06年5月のFOMC(連邦公開市場委員会)声明において、インフレリスクに対処するには、ある程度のさらなる金融引締めが、なお必要となる可能性もあるとしたものの、利上げの時期と程度は今後発表される指標等に基づく景気見通しの変化が重要になると強調するなど、今後の政策方針については経済指標次第との見解を示した。