<2005年の経済>
2005年のカナダ経済は、年間2.9%の成長となり、前年(3.3%)に引き続き景気が拡大した。年間を通して、エネルギー価格の高騰による輸出の好調に支えられ、堅調な消費、設備投資の増加が景気拡大に貢献した。年前半は、カナダ・ドルの増価による海外需要の鈍化や、在庫投資が調整局面に入ったにも関わらず好調な消費や設備投資などが景気を下支えして、1〜3月期は前期比年率2.2%、4〜6月期は同3.4%と緩やかに拡大した。年後半になり、7〜9月期は、力強い外需拡大を背景に、一層のカナダ・ドルの増価及び原油価格の高騰から輸出が拡大するとともに、失業率が9月に6.7%と30年来の低水準となるなど雇用環境の改善が持続する中、堅調な消費や設備投資に牽引されて同3.2%と順調な成長となった。10〜12月期は、好調な輸出が2四半期連続で増加したものの、内需拡大を反映して輸入も増加し、純輸出はマイナスとなる一方、引き続き消費、設備投資が堅調に推移したことから、同2.6%の成長となった。
<2006年の経済見通し>
2006年も3%程度の成長が見込まれる(OECD見通し3.1%(2006年5月)、民間機関27社の平均3.1%(2006年4月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2005年10月時点3.0%)に比べて上方修正されている。 成長を支える要因としては、雇用の拡大や株の資産価格の上昇とともに、引き続きエネルギー価格等の高騰により原油等のエネルギー関連の輸出が好調なことから、個人消費及び設備投資の拡大が見込まれることが挙げられる。 下方リスクとして、最大の貿易相手国であるアメリカの景気の急減速や、カナダ・ドルの過度の増価に伴なう輸出の減速、国内では、原油価格の高騰によるインフレ圧力が一層高まる危険性が挙げられる。
<財政金融政策の動向>
カナダ政府は94年度から本格的な財政再建に取り組んでおり、97年度以降、財政収支は9年連続で黒字となっている。2006年度予算案によると、歳出は前年度比5.0%増の2,236億カナダ・ドルとなる見込みである。一方、好調な経済を反映して歳入も同2.8%増の2,271億カナダ・ドルとなり、こうした中、政府は14年度までに政府財務残高をGDP比25%にするという目標を掲げている。 カナダ中央銀行は、景気の拡大とエネルギー価格の高騰に伴うインフレ抑制を目的に、2005年9月から06年5月現在まで7回連続でオーバーナイト政策金利を0.25%ポイントずつ引き上げ、4.25%とした。5月の利上げ時の声明では、内外における経済の強い傾向が続いているものの、「この利上げによって、経済は予測の経路を維持し、インフレ率を目標の2%へ戻すことができる水準にある」との考えを示し、追加的な利上げの可能性には言及しなかった。