<2005年の経済>
2005年の経済成長率は前年比5.3%となり、2000年以来の高成長となった04年と比べ、やや緩やかな成長となった。年前半は、世界的なIT関連財における在庫調整の影響等により輸出が伸び悩む中、個人消費が低金利や堅調な商品市況に支えられて拡大し、景気を下支えした。年後半は、IT関連財需要の回復で輸出が増加したことと、引き続き個人消費を中心とした内需の堅調な推移により景気は拡大した。産業別では、年前半の外需鈍化を背景として製造業が減速したが、観光業を中心としたサービス業が成長をけん引した。
消費者物価上昇率をみると、2000〜04年の前年比平均が1.4%程度であったのに対し、05年は前年比3.1%と急激に上昇した。主な要因は、(1)原油価格高騰による燃料補助金の削減、(2)タバコ・酒税の引上げ、(3)高速料金の引上げ等である。燃料補助金については、政府は小売価格を安定させるための補助金を拠出しているものの、原油価格高騰を背景に燃料価格を05年に入ってから3度に渡って引き上げており、05年初から比較した引上げ率は累計でガソリン価格では14%、ディーゼル価格では42%となっている。
<2006年の経済見通し>
2006年の経済成長率は、5%程度の成長になると予測される(政府見通し5.5%、民間機関9社の平均5.3%(06年4月時点))。民間機関の見通しは、半年前(05年10月時点5.2%)と同程度となっている。05年後半から回復した外需は、06年も引き続き経済全般をけん引していくものとみられる。内需は、第9次5か年計画による政府支出の増加と力強い外需を背景とした民間投資の拡大が予想される。下方リスクとしては、消費者物価の上昇及び金利の引上げに伴う個人消費の減速が挙げられる。
<財政金融政策の動向>
財政政策については、2005年度の財政赤字はGDP比3.8%となった。政府は財政の改善を目指しており赤字幅は3年連続で縮小している。06年度予算案では赤字は同3.5%とされている。 政府は06年3月に第9次5か年計画(06〜10年)を国会に提出した。アブドラ政権になってから初の中期計画となる。計画では20年に先進国入りすることを目指し、製造業の比重の高い経済からの脱却と、知的集約型経済への移行を目的とし、同時に貧困の減少のための施策として開発の遅れた地域へのインフラ投資や農業分野への投資強化が計画されている。また、非マレー系国民に比して相対的に貧困層の多いマレー系国民の経済的地位を向上させることを目的としたブミプトラ政策は引き続き実施するとし、20年までにブミプトラ(マレー系国民および先住民族)の資本保有比率を30%とするとしている。
金融政策をみると、マレーシア中央銀行は04年4月に政策金利をオーバーナイト政策金利に改めて以降、2.7%に据え置いていたが、05年11月に1年7か月ぶりとなる0.3%ポイントの引上げを実施した。以後06年5月までに05年2月及び4月の2回の引上げが実施され、金利は3.5%となっている。この利上げの背景として、原油価格高騰によるインフレ圧力の高まりへの懸念がある。
為替は、05年7月21日以降通貨バスケット方式による管理フロート制に移行した。06年4月末では05年末に比し、リンギは米ドルに対して3.1%の増価となった。