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9 タイ         The Kingdom of Thailand

タイ経済のこれまで

<2005年の経済>
  2005年の経済成長率は4.5%と、04年の6.2%と比べ緩やかな成長となった。年前半は、(1)原油価格高騰による消費者物価の上昇及びそれに伴う金利引上げによる個人消費や民間投資の減速、(2)干ばつによる農業生産の減少、(3)04年12月の津波の被害による観光業の停滞等を要因として鈍化した。年後半は、引き続き原油価格高騰の影響があったものの、農業、観光業が回復したことに加え、世界的な在庫調整が終了したIT関連財、及び自動車等の輸出が拡大し、景気は緩やかに拡大した。貿易収支及び経常収支は、原油価格の高騰の影響により輸入が増加したことから05年通年では共に97年以降で初めて赤字に転じた。消費者物価上昇率は、燃料価格の上昇とそれに伴う輸送コスト等の上昇、天候要因による生鮮食料品価格の上昇により、04年の前年比2.8%から同4.5%、この動きはコア消費者物価上昇率にも波及しており、04年の同0.4%から同1.6%へと加速した。

タイの主要経済指標

<2006年の経済見通し>
  2006年の経済成長率は5%程度になると予測される(政府見通し4.5〜5.5%(06年3月時点)、民間機関9社の平均4.9%(06年4月時点)。民間機関の見通しは半年前(05年10月時点5.1%)から下方修正されている。
  成長を支える要因としては、政府のインフラ整備計画(メガ・プロジェクト)による公共投資の実施が主要なけん引役になるとみられる。輸出についてはIT関連財、コンピュータ部品、自動車及び、農業生産物を中心に堅調に増加するとみられ、また、輸入の伸びは05年に実施された燃料補助金の廃止及び代替エネルギーの利用促進等の省エネルギー政策により抑制されるとみられる。下方リスクとしては、原油価格高騰が続くことによる消費者物価上昇と金利の引上げ継続による個人消費の減速、また、タクシン首相一族が保有する持ち株会社の不正売却疑惑に端を発した政治的混乱が長期化することによる政府の投資計画実施の遅延が挙げられる。

<財政金融政策の動向>
  財政政策をみると、政府は2005年から大規模なインフラ整備を目的とした投資計画(メガ・プロジェクト)を進めている。同計画の当初の予算は05年以降5年間で1.7兆バーツであったが、低所得者向けの住宅建設の予算を増額したこと等から、1.8兆バーツに引き上げられており、そのうち国家予算から6,978億バーツの支出が予定されている。事業内容は大量輸送機関(地下鉄、高架鉄道)、運輸、住宅、水資源、教育、公衆衛生等、多岐に渡っている。07年度予算については、2月下旬の下院解散以降、政治の空白期間が続いており、予算の成立が遅れている。
  金融政策については、原油価格の高騰を受けたインフレ圧力の抑制を目的とし、政策金利(14日物レポ金利)を04年8月以降0.25〜0.50%ポイントずつ段階的引上げを行っており、05年4月末時点で4.75%としている。為替をみると、利上げ等を背景にバーツはドルに対し06年1月以降増価基調で推移し、4月末時点では05年末に比し7.5%程度増価している。


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