目次][][][年次リスト

13 ユーロ圏              Euro Area

ユーロ圏経済のこれまで

<2005年の経済>
  2005年の経済成長率は1.3%となり、04年の2.0%から減速した。年前半は外需主導で景気は緩やかに回復した。これは、05年初以降ユーロが対ドルで減価傾向にあり、ユーロの対外的な価格競争力が大きく改善したことが影響している。年後半は輸出企業を中心に、企業コンフィデンスや企業収益の改善などにより設備投資が増加し、成長を支えた。個人消費は、スペイン、フランス等において住宅価格上昇による資産効果が続いたこともあり、04年並の水準となった。
  物価は、05年8月までは消費者物価上昇率で2%近傍で推移していたが、原油価格の高騰により一時2.6%まで上昇したものの、その後、上昇率が鈍化した。圏内での労働市場改革が進み、失業率は年間を通じて改善され、04年の年平均8.9%から同8.6%へ低下した。為替については、好調な米国経済や米国の利上げ等を背景に、年初の1ユーロ=1.3ドル前半から年後半には1ユーロ=1.18ドル台へとおおむね減価基調で推移した。

ユーロ圏の主要経済指標

<2006年の経済見通し>
  2006年の経済成長率は、2%程度となる見込みである(欧州委員会見通し2.1%、民間機関28社の平均1.9%(2006年4月時点))。欧州委員会の見通しは、前回の1.9%から、民間機関の見通しは1.8%から、それぞれ上方改定されている。なお、06年1−3月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率で2.4%となった。
世界経済の堅調な回復を背景に、輸出の着実な拡大が期待されている。企業景況感は力強く、今後も設備投資の伸びを中心とする内需が主導する形での成長が続くと見込まれる。また、労働市場の柔軟性は増しており、雇用環境の改善や所得の伸びにより、これまで顕在化していなかた家計部門の需要が喚起され、消費も緩やかに上昇していくと見られる。
  下方リスクとしては、原油価格の高騰、米国経済の減速、ユーロ高に伴い、企業景況感が悪化して、設備投資が抑制される可能性や、エネルギー価格の上昇に伴うインフレ圧力により購買力が低下して個人消費が冷え込むことも懸念される。フランス、スペインなど一部加盟国では、ECBも注視するほど住宅価格が上昇していることや、家計債務が増大していることも、個人消費に対するリスクとして挙げられる。
  なお、圏内経済に大きな影響を持つドイツにおいて07年から付加価値税の引き上げが予定されていることから、06年末にかけての駆け込み需要の発生と07年はその反動が予想される。

<金融政策の動向>
  欧州中央銀行(ECB)は、05年12月に政策金利(短期買いオペの最低応札金利)を2年半ぶりに0.25%ポイント引き上げ2.25%とした後、2006年3月にはさらに0.25%ポイント引き上げて2.50%とした。ECBのトリシェ総裁は、5月の政策理事会後の記者会見において、「最近の経済指標は我々の見通しを裏付けている。ただし中期的な物価安定に対するリスクが現れないよう、理事会は強く警戒していく。原油価格上昇やその二次転嫁、間接税など物価安定に対するリスクは引き続き上向きである。」と述べ、堅調な経済指標と直近の物価上昇(4月HICP2.4%)を背景に利上継続を示唆した。


目次][][][年次リスト