<2005年の経済>
2005年の経済成長率は1.0%となり、2年連続のプラス成長となった。ただし、引き続き外需による成長であり、内需については、設備投資は増加したが個人消費や建設投資は引き続き低調に推移した。年初からのユーロ安並びに世界経済の回復、企業の競争力強化を背景に輸出が順調に拡大した。一方、リストラの反動として労働分配率が02年から下落し続けており、失業率も高まった結果、個人消費については前年比0.0%と低迷した。域内最大の市場ということもあり欧州景気の足かせとなった。
<2006年の経済見通し>
2006年の経済成長率は、05年を上回る1%台半ば程度となる見込みである(欧州委員会1.7%、民間機関27社の平均1.7%(06年4月時点))。民間機関の見通しは、半年前(05年10月時点1.4%)に比べて上方修正されている。世界的な景気回復の恩恵を受けて外需の増加が期待される。企業景況感は非常に強く、エコノミストに対するZEW景況感指数並びに主要四業種に対するIFO景況感指数は数年来のレベルまで改善されており、実際にリストラによる競争力強化の効果で製造業の新規受注も順調に伸び、引き続き企業部門の受注と生産の拡大が示唆されている。内需の柱である消費にも復調の兆しがある。企業リストラも一服し、失業率も徐々にではあるが低下しつつある(06年4月11.3%)。
06年5月に発表となった1〜3月期の実質GDP成長率は、前期比年率1.5%(前期比0.4%、前年同期比2.9%)となり、増加に転じた。建設投資には1〜3月の大寒波の影響が大きく出たものの、高い景況感指数・消費者信頼感指数を裏付けるように消費と設備投資が大幅増であったため、内需はプラスになった。エネルギー価格の上昇で輸入が大きく伸びているものの、それを上回る輸出の伸びで外需もプラスに転換した。 成長を支える要因としては、07年1月から実施予定の付加価値税率の引上げ(16→19%)に伴う駆込み消費も挙げられる。ただしこれは将来に反動減をもたらす。また06年6〜7月にはワールドカップ・ドイツ大会が開催され、消費へプラスの影響が期待されている。下方リスクとしては、米国経済の失速、ユーロ高に伴う輸出の減少が懸念される。特にドイツは輸出がGDPの約40%を占め、為替の影響は非常に大きい。原油高については多面的な見方があり、ECBが指摘するように好況に沸く産油国や資源国向けの輸出を大幅に伸ばす一方で、生産者物価上昇率が06年に入り前年比5%を越える水準で推移しているようにインフレを加速させる懸念がある。
<財政政策の動向>
2005年11月にドイツの2大政党キリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)が「Gemeinsam fuer Deutschland - mit Mut und Menschlichkeit(勇気と人間性をもってドイツのために共同で取り組もう)」と題する連立協定を発表し、約40年ぶりに大連立政権を樹立し、メルケルCDU党首を首班とする新政権が発足した。連立協定の中身は、前述の付加価値税や年金支給開始年齢、富裕層を対象とした所得税率それぞれの引上げ等、財政再建を前面に出したものとなっている。05年の財政赤字はGDP比3.3%となり、04年の同3.7%に引き続き、EUの「安定成長協定」で定めた遵守基準(3%)を超過した。ただドイツ政府が06年2月に提出した安定プログラムでは07年に同2.5%まで赤字削減するという方針が示され、欧州委員会もこの内容を受け入れ、前述の財政緊縮効果を認める形となった。