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第II部第2章のポイント

1.調整局面が続くIT市況とアメリカの需要動向

●世界のIT市況は、2004年後半から調整局面にあり、2005年前半においてもこの局面が続いている。
●ただし、業況拡大時の在庫積み上げに対する慎重姿勢や、IT関連需要の堅調を背景に、調整の度合いは軽微なものとなっている。
●IT関連需要が堅調である要因としては、投資面では、価格競争圧力が強く、効率改善につながるIT投資を行う誘引は依然強いこと、及びIT関連製品の価格低下に伴い、新規需要が生じていることが挙げられる。消費面でもIT関連製品の価格低下を背景とした、堅調なIT関連支出が見込まれている。
●なお、アメリカにおける薄型テレビの需要は、これまで住宅事情等の違いから日本ほどは強くなかった。しかし、同製品の価格低下に伴い関心も高まっており、中国市場と並び今後の成長が期待されている。

2.ヨーロッパの住宅ブーム

●ヨーロッパでは、1990年代後半から住宅価格が上昇し始めた。一部の国では個人所得に対する住宅価格の比率が大幅に高まるなど、ファンダメンタルズを上回り過大評価されている可能性があり、その他の国においても、住宅ブームと呼ぶべき状況にある。
●こうした住宅ブームの要因としては、低金利や金融市場の規制緩和、金融機関の間の競争激化等を背景とした住宅ローン金利の低下が挙げられる。
●また、移民の流入や一部の国でとられている住宅関連の優遇税制により、住宅需要が旺盛である一方、賃貸市場の未整備等によりこれに見合う供給が行われておらず、需給にミスマッチが生じていることも要因となっている。
●ヨーロッパの住宅市場は、2005年も活発な活動が見込まれている。英国では利上げの影響等から住宅市場は沈静化しつつあるが、一部の国では住宅価格高騰が懸念され始めている。
●住宅市場の急激な調整は、逆資産効果等を通じ消費に悪影響を与える可能性があるが、現在のところ住宅価格急落のリスクは低い。この要因としては、ユーロ圏経済が緩やかな回復が見込まれること、当面利上げは難しい状況にあること、住宅ローン残高が相対的に低いことなどにより、住宅需要が依然堅調であると見込まれることによる。



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