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第II部 第1章のポイント

2005年の世界経済は2004年に比べ成長率が低下するが着実に回復

●2004年の世界経済の成長率は3.9%と見込まれるが、2005年は景気を牽引してきたアメリカと中国の成長率の低下の影響等から、3.2%程度となるものとみられる。

1.アメリカ経済の成長率は巡航速度へ

●2004年のアメリカ経済は原油価格の高騰にもかかわらず、力強い内需に支えられて4.4%と高い成長率となった。原油高による物価への影響が懸念されたものの、年全体としての物価上昇圧力は限定的なものにとどまった。2005年の成長率は3%台半ば程度と前年に比較して多少低下するものの、依然、潜在成長率である3.2%を上回るペースで成長するものとみられる。
●2004年央は歴史的に低水準となっていた政策金利が、景気拡大の維持と物価上昇圧力への配慮との間の微妙な均衡を維持しつつ、0.25%ポイントずつ慎重なペースで引き上げられた。2005年に入っても引き続きこのペースは維持されているが、物価上昇圧力の高まりを背景に2005年末に向け4%弱程度に引き上げられることが見込まれる。

2.アジア地域は中国を中心に引き続き高い成長が続く

●アジア地域全体の景気を牽引している中国経済は、2004年の成長率は9.5%と高い伸びとなった。とりわけ1〜3月期において、固定資産投資全体でも前年比40%を越える伸びとなったため、政府の直接的・間接的な引締め政策が実施された結果、年後半には20%強の伸びへと低下し、輸入の伸びにも低下がみられた。2005年に入ってからも、景気過熱懸念は完全には払拭されておらず、政策当局は8%前後の成長率を目標に、マクロコントロールを通じたソフトランディングを目指し、注意深い政策運営を続けている。

3.ヨーロッパ経済は原油高やユーロ高により緩やかな回復

●2004年のユーロ圏経済は、年前半は堅調な外需が景気を牽引したものの、年後半は原油高やユーロ高の影響で外需が伸び悩んだこともあり、緩やかな景気回復となった。内需が好調な、フランス、スペインが比較的高い成長となったのに対し、内需が弱いドイツ、イタリアは低成長となるなど、ユーロ圏内における景気動向のばらつきがより鮮明となった。景気の回復は2005年も緩やかなものになると見込まれる。英国では内需を中心に堅調な景気回復が続いた。

4.2005年世界経済の抱えるリスク

●世界経済が今後抱えるリスクとしては、アメリカ及び中国経済の急減速、原油価格高止まり、アメリカの高水準の経常収支赤字、人民元の大幅な変動等がある。


 

第II部 世界経済の展望

 世界経済(日本に関係の深い22か国・地域)は2003年後半から着実な回復を続けている。世界経済の牽引役を果たしてきたアメリカ経済は、一時的に成長率が低下する局面もあったものの2004年全体では4.4%という高成長となった。中国では2004年初に一部業種で固定資産投資の過熱が発生し、引締め政策がとられたものの、経済全体としては9%を上回る成長の下で力強い景気拡大が続いた。一方、ヨーロッパでは各国間で成長率にばらつきがみられるなかでの緩やかな景気回復となった。世界経済全体の2004年の成長率は前年を上回り3.9%程度になると見込まれる。
  以下では、2005年の世界経済がどのような姿となるかについて述べ、その後、最近の世界経済の動向に関しトピックとなっている、IT市況の調整と、ヨーロッパの住宅ブームについて取り上げる。

第1章 2005年の経済見通し

 2005年の世界経済は全体として成長率が低下し、3.2%程度となると予測される。これは、これまで世界経済の回復を牽引してきたアメリカと中国の成長率の低下が、世界経済全体に波及するものと見込まれる。本章では、2005年の経済見通しのポイントを地域別に検討する。検討においては民間機関の平均的な見方(5月20日までの公表分)を参考とした(第1-1-1表)。なお、国・地域別のより詳しい動向は別添の資料を参考されたい。


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