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1  アメリカ    United States of America

アメリカ経済のこれまで

<2003年の経済>
 2003年前半は、イラク情勢の緊迫化に伴う不透明感等により景気の回復力が弱まったが、イラク戦争が終結後、不透明感の払拭により景気回復の勢いは持ち直した。さらに、5月に成立した減税パッケージが個人消費を刺激し、生産、設備投資も増加するなど、7〜9月期には19年ぶりとなる8.2%の成長を遂げた。このように年後半は力強く回復し、2003年全体で3.1%の成長となった。
 ただし、雇用は持ち直しているものの、その勢いは引き続き弱いものであった。また、景気回復の勢いの持ち直しに伴い、経常収支赤字は拡大傾向が続き、2003年は5,418億ドル(GDP比4.9%)と過去最高となっている。財政赤字も拡大傾向で推移し、再び双子の赤字となるなか、ドルは減価傾向で推移した。

<2004年の経済見通し>
 2004年の経済成長率は4%台半ばとなる見込みである(民間機関58社平均4.6%(2004年4月)、政府見通し4.4%(2004年2月)、議会予算局4.8%(2004年1月))。民間機関の見通しは、半年前(2003年10月時点3.9%)と比較し、上方修正となっている。また、ドル安基調を受け、経常収支赤字はやや縮小するものの、依然として高水準で推移すると見込まれている。物価は前年比2%程度の安定した伸びが続くとみられる。
 下方リスクとしては、雇用の回復がさらに遅れることにより、消費に悪影響を及ぼすことが懸念されるほか、減価基調にあるドルが暴落し、経常収支赤字のファイナンスが困難になることが挙げられる。

アメリカの主要経済指標

<財政政策の動向>
 2003年度のアメリカ連邦政府の財政収支は過去最大となる3,742億ドル(GDP比3.5%)の赤字となった。3月に成立したイラク戦争関連での補正予算や、5月に成立した追加景気刺激パッケージにより、2003年1月時点の見通しを大きく上回る赤字となった。
 2004年度は、2003年11月にイラク・アフガニスタンにおける作戦経費、復興関連のための875億ドルの追加予算が成立するなど、行政管理予算局(OMB)によれば5,210億ドルの赤字となる見込みである。さらに、12月には今後10年間で4,000億ドルの支出増となる高齢者医療保険(メディケア)制度改革法案(対象を処方薬代にも拡大)が成立している。なお、ブッシュ大統領は2004年2月の予算教書演説等で、今後5年間で財政収支赤字を半減させる方針を示している。

<金融政策の動向>
 金融政策は緩和スタンスを維持している。2003年6月のFOMC(連邦公開市場委員会)でフェデラル・ファンド・レート誘導目標水準を0.25%ポイント引き下げ、1.00%とした。その後、景気回復が力強いものとなるなか、2003年12月のFOMCでは、ディスインフレのリスクについてはこれまでより後退したとされたが、雇用や稼働率の軟調な動きを背景に、2004年1月のFOMC以降も現在の金融緩和政策の取りやめには忍耐強くなり得るとされている。
 今後の見通しとしては、雇用の回復の遅れなどを背景に2004年末前後までは現在の低い金利水準を維持するとみる向きが多い。


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