<2003年の経済>
2003年の経済成長率は7.3%となり、2002年の4.3%を上回り98年の金融危機以降5年連続のプラス成長を達成した。この成長は、主にエネルギー部門を中心とした投資の増加と可処分所得の増加を背景とした個人消費の増加によるものである。鉱工業生産は7.0%の増加となった。
<2004年の経済見通し>
2004年の経済成長率は5%台の経済成長が見込まれる(政府見通し3.8〜5.2%(8月)、民間機関6社の平均5.7%(2004年4月時点))。民間機関の見通しは半年前(2003年10月時点4.6%)に比べて上方修正されている。高い経済成長を支えてきた原油価格の上昇がピークを過ぎたとみられており、成長は減速するもののおおむね安定した成長を続けるとみられる。
成長を支える要因としては、可処分所得の高い伸びから個人消費の増加が続いて内需を牽引することや、エネルギー産業を中心とする投資の増加が続くことなどが挙げられる。下方リスクとしてはルーブル高や生産コストの上昇による国際競争力の低下や輸出の減少、原油価格の低下等が挙げられる。また、エネルギー産業以外の企業競争力の弱さが成長を抑制する可能性もあるが、政府は、天然資源輸出に依存した経済を多様化させるための構造改革を進めており、これによってエネルギー産業以外の分野の成長が進むことが期待される。
<財政金融政策の動向>
2003年は、原油価格の上昇を背景として財政収支はGDP比1.6%(2,282億ルーブル)の黒字となった。2004年度予算においては同0.5%の黒字が見込まれており、2001年以来4年連続の財政黒字となる見通しとなっている。
原油を始めとした天然資源の輸出に依存したロシア経済は、これらの価格変動の影響を大きく受けるため、政府は2004年に原油価格下落時のための予算的な備えとして、原油価格が高いときに生じた臨時収入を蓄える「安定化基金」を導入した。これによって原油価格の変動による財政への影響が吸収されることが期待される。
2003年のインフレ率は12.0%となり、政府の見通し(10〜12%)を達成した。大量の外貨流入によって通貨供給量が急速に増加していたが、年後半には急激に伸びが鈍化し、政府が自然独占サービスの価格上昇を抑制したこともありインフレは緩やかに抑えられた。中央銀行は2004年も急速なルーブル高の抑制やインフレの抑制に努めるとしているが、「安定化基金」には原油高により発生する過剰流動性を吸収し、ルーブル高やインフレを抑制する効果も期待される。