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1  アメリカ    United States of America

アメリカ経済のこれまで

<2003年の経済見通し>
 2002年を通じて景気は回復基調にあったが、イラク情勢の緊迫による影響などから、2002年後半から2003年前半に景気の回復力は弱まった。3月中旬に原油価格は下落し、その後は安定的に推移しており、イラク戦争による景気の下押し圧力はほぼなくなったものとみられる。
 ただし、雇用情勢は厳しく、イラク戦争前に悪化した消費者マインドは急回復が望めないことから、消費の回復は弱いものにとどまり、年前半は低い成長率にとどまるとみられる。年後半にかけて消費が持ち直し、それが設備投資など企業部門に波及していくことで、成長が加速することが期待される。
 この結果、年前半の成長率は2%前後にとどまった後、年後半には3%半ばの成長となることが見込まれており、2003年通年の成長率は2%台前半の水準になると見込まれている(民間機関53社の平均2.4%(2003年4月)、政府見通し2.9%(2003年1月))。これは昨年秋時点での民間見通し(3.0%)に比べ下方修正されている。

アメリカの主要経済指標

<財政政策の動向>
 2002年後半の景気回復力の弱まりを受けて、ブッシュ政権は2003年1月に減税を中心とする追加景気刺激策(今後10年間で総額7,260億ドル(3月の議会試算による))を提案した。2月の予算教書で示された2004年度予算は、追加景気刺激策に加え、国防、国土安全保障予算の増額なども盛り込まれており、拡張的なものとなっている。
 予算教書では財政収支赤字を、2003年度3,040億ドル(GDP比2.8%)、2004年度は3,070億ドル(GDP比2.7%)と見込んでいる。見通しを示した2008年度までの全期間を通じて財政赤字となり、累計は2004〜08年度の5年間で1兆840億ドルに達する。
 3月中旬にイラク戦争が始まったことを受けて、下旬にブッシュ政権は戦費を中心とする2003年度補正予算を提示した。議会では、航空業界支援を内容に加え、総額790億ドルとブッシュ政権の提示よりさらに40億ドル程度増額した予算を可決した。
 他方、このような歳出増の流れに対し、議会では財政赤字の拡大に歯止めをかける動きもみられる。1月にブッシュ政権が提示した追加景気刺激策について、上院では減税の今後10年間の規模を約半分にした案が、下院でも2割以上縮小した案が可決されており、今後予算審議の過程で調整が図られることとなる。

<金融政策の動向>
 金融政策は緩和スタンスを維持している。2002年後半の景気回復力の弱まりに対応して、11月には約1年ぶりに利下げを行った。2003年に入って地政学的リスクの増大が景気回復を抑制していた。イラク戦争の開始がほぼ確実となった3月18日に行われたFOMCでは、通常行っている景気低迷リスクと物価上昇リスクについての判断を示さない形での金利据え置き声明を公表した。
 今後の見通しとしては、年前半の回復は弱いものにとどまるとの見方から、2003年秋までは金利を現在の低い水準で維持するとみる向きが多い。


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