<2002年の経済>
2002年の経済成長率は1.6%となり、前年に比べやや減速した。これはユーロ圏の成長鈍化等により輸出が弱含み、企業の設備投資も減少傾向が続いたことなどによるものである。しかし、イギリスが他の主要国と比べ比較的高い成長率を維持できたのは、家計部門の良好な雇用・所得環境および歴史的な低水準にある政策金利等に支えられて、個人消費や住宅投資が堅調に増加したためである。年を通じて株価は下落基調だったが、住宅価格の高騰が株価下落の逆資産効果を相殺した。なお製造業の生産は、世界経済の回復力の弱さから減少しており、機械工業受注も大きな落ち込みが続いた。
<2003年の経済見通し>
2003年の経済成長率は、2%台前半となる見込みである(民間機関24社の平均値2.1%、2003年4月時点)。民間機関の見通しは、昨年秋(2.7%)に比べ下方修正されている。世界経済の回復は緩やかなものにとどまり、輸出の回復は限定的となる見込みである。しかし実質賃金が緩やかに上昇することから可処分所得の増加が見込まれ、個人消費の伸びが引き続き期待される。
下方リスクとしては、高騰が続いている住宅価格が今後仮に下落すれば、逆資産効果が発生するおそれがあること、2003年に入って消費マインドが急速に悪化しており消費に悪影響を及ぼすおそれがあること、世界経済の回復に不透明感が増していることなどが懸念材料として挙げられる。
<財政金融政策の動向>
財政収支は2001年度まで連続して黒字を達成していたが、2002年度は景気減速の影響等から税収が伸び悩み、赤字となった(GDP比1.4%)。4月に発表された2003年度予算では、欧州経済の成長鈍化がイギリス経済に大きな影響を与えると予測されることから、財政収支は 270億ポンドの赤字(GDP比2.4%)になると見込まれている。なお、国民保健サービス(NHS)については、年平均7.4%の支出増が見込まれているが、その財源として2003年4月から保険料を雇用者、被用者、自営業者の所得に追加的に1%上乗せして徴収する方針を、政府は2002年4月に明らかにしている。
金融政策については、2003年2月に1年3か月ぶりにイングランド銀行は政策金利を引き下げ、3.75%とした。その背景として、RPIX(住宅金利支払いを除く小売物価上昇率)は目標水準の2.5%をやや上回っているが、これは石油価格や住宅価格が一時的に大きく寄与したものであって長続きせず、世界需要および内需の見通しはこれまでの見通しよりいくぶん弱いことから0.25%ポイントの利下げが適当だとしている。