<2002年の経済>
2002年の経済成長率は、アジア通貨危機以降もっとも高い5.2%となった。低金利が続いていることに加え、景気拡大により失業率が低下するなど雇用情勢が改善し、また、農産物価格上昇もあって農業従事者を含めた幅広い層の所得が増加したことから、個人消費が堅調に拡大した。民間投資は、住宅を中心に建設投資が引き続き大幅に拡大し、設備投資も年後半から大幅に拡大した。景気対策により政府消費支出は年初に増加したが、その後は、公共投資とともに減少した。一方、原油価格上昇により秋頃から消費者物価上昇率がやや高まった。輸出は電子・電気関連を始めとする製造業製品を中心に大幅に増加した。アメリカ、日本、EUなど主要先進国向け輸出が伸び悩む中、特にASEANや、中国などアジア向け輸出が拡大した。
<2003年の経済見通し>
前年の景気が堅調な拡大となったことから、4〜5%程度の成長になると見込まれる(政府見通し4〜5%、民間機関6社の平均4.3%(2003年4月時点)。民間機関の見通しは半年前(2002年10月時点4.4%)とほぼ同じである。
成長を支える要因としては、低金利や企業収益の増加、雇用拡大を背景として、個人消費や民間投資など内需が景気拡大を牽引すると見込まれる。
下方リスクとしては、世界的な景気の先行き不透明感により輸出企業の設備投資の増勢が鈍化する可能性、重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行により、旅行客減少による観光業の不振等から景気鈍化につながること等が考えられる。
<財政金融政策の動向>
財政は、景気拡大による税収の伸びにより、赤字幅が当初の予定を大幅に下回っている。特に、民間消費の拡大により、付加価値税(VAT)等による収入が大幅に増加しており、2002年10月〜2003年2月の税収は前年比20%増となった。こうした動きを受けて、今年度(2002年10月〜2003年9月)予算の財政赤字については、当初の見通し1,749億バーツ(GDP比3.1%)から、1,325億バーツ(同2.3%)に修正された。また、政府は、2002年12月に個人所得税非課税限度額の引上げや、住宅投資促進を目的とした不動産キャピタルゲイン課税免除など、減税を柱とした内需刺激策を発表し、翌1月から実施している。
金融政策については、2002年11月にアメリカ経済の減速による輸出減少の影響を考慮し、政策金利である14日物レポ金利を0.25ポイント引き下げ1.75%とした。その後は政策金利を据え置いている。為替レートは2002年初から7月にかけて増価した後、一時急激に減価する局面があったものの、その後は増価基調で推移している(3月31日時点1ドル=42.8バーツ)。