<2002年の経済>
2002年の経済成長率は3.7%となり、政府見通しの3.5%をわずかに上回った。輸出が伸び悩む中で、引き続き内需主導の成長となった。最も大きく成長に寄与したのは民間消費で、政情安定や金利低下、最低賃金引上げなどから前年を上回る伸びとなった。また、公的部門の賃金引上げなどにより政府消費の伸びも前年を上回った。一方で、海外からの投資が減少を続け、国内投資も伸び悩んだことから、固定資本投資は減少した。物価上昇率は前年よりも上昇したが、為替レートの増価により上昇率は徐々に低下した。輸出は2001年の大幅な減少の後、年後半から回復し、特に石油・ガス輸出は大幅に伸びたが、全体では1.2%の伸びにとどまった。
<2003年の経済見通し>
2003年は3%台後半〜4%程度の成長になると見込まれる(政府見通し4%、民間機関6社の平均3.4%(2003年4月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2002年10月時点4.0%)に比べ
て下方修正されている。
成長を支える要因としては、引き続き民間消費が増加を続けること、国際機関・海外援助国からの援助継続等が挙げられる。
下方リスクとしては、イラク戦争による国内治安悪化懸念等から外国投資減少にさらに拍車がかかること、先進国の景気先行き不透明感や、中国の台頭などアジア域内での競争激化により、輸出や外国資本の流入が減少すること、それらによる失業率の悪化が消費に悪影響を及ぼすことが懸念される。
<財政金融政策の動向>
政府は2002年11月、バリ島で起こった爆弾テロ事件の経済への影響に対応するための2003年度改定予算を決定した。景気刺激策として、10.6兆ルピア(GDP比0.6%程度)が支出に追加された。そのため財政赤字は、健全化を目指していた当初案のGDP比1.3%から、1.8%(34.4兆ルピア)に拡大した。財政赤字を賄う財源としては、国有企業民営化や資産売却などによる国内から調達と、海外の援助国からの融資に期待している。
政府はIMFからの融資条件である経済改革プログラムのひとつとして、燃料価格への政府補助金削減に取り組んでいるため、ここ数年公共料金の値上げが続いている。2003年も1月1日からガソリンや電気、電話料金などの値上げが行われたが、これに対して国民による大規模な抗議デモが起きたことにより、1月中旬、政府はこれらについて再値下げや値上げ延期を行った。この措置により、2003年度の財政赤字はさらに拡大すると見込まれる。
金融政策については、物価上昇率が低下していることから緩和基調が続いている。中銀証券(SBI)金利(3ヶ月物)は2002年1月の17.43%から2003年3月には11.97%まで低下している。通貨ルピアは2002年前半に大幅に増価した後、バリ島のテロ事件の影響などにより一時的に減価する動きもあったが、概ね落ち着いた動きで推移した。2003年3月末現在、1ドル=8,902ルピアとなった。