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10  マレイシア    Malaysia

マレイシア経済のこれまで

<2002年の経済>
 2002年の経済成長率は、前年の0.4%から回復し4.2%と緩やかな拡大局面に入った。低金利に加え、給与収入増加やパーム油などの商品価格上昇による農業収入の増加など、家計収入の増加により、民間消費が景気を牽引した。景気対策により政府支出も拡大した。また、主に公共投資の拡大により固定資本形成が年後半から増加した。輸出は前年の大幅な減少から回復し、それに伴い原材料などの需要が増加したことにより輸入も増加に転じた。しかし、輸出額の約50%を占める電子・電気製品の輸出の伸びは年後半から鈍化しており、国際商品価格上昇によるパーム油や原油の増加が輸出の伸びを支えた。

マレイシアの主要経済指標

<2003年の経済見通し>
 内需に牽引された景気拡大が続き、4.5%程度の成長になると見込まれる(中央銀行見通し4.5%、民間機関6社の平均4.2%(2003年4月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2002年10
 月5.0%)よりも下方修正されている。
 成長を支える要因としては、商品価格上昇を背景に、輸出額の増加による所得増加から個人消費の拡大が引き続き見込まれること、また、政府が景気下支えのための財政政策を予定していることなどが挙げられる。
 下方リスクとしては、最大の輸出相手国であるアメリカを始めとする世界経済の先行き不透明感から、企業の設備投資や個人消費へのマインド面での悪影響や輸出の伸びの鈍化、また、重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行による旅行客減少から、観光業や運輸、個人消費等への悪影響が懸念される。

<財政金融政策の動向>
 2002年度の財政赤字はGDP比5.6%と、予定されていた同4.7%を上回った。2002年後半以降世界的な不透明感が増す中で、景気刺激のための公共投資などに対する支出が予定よりも増大された。一方、歳入については堅調に増加したことから当初予算を上回った。政府は財政赤字を削減する方針を打ち出しており、昨年発表された2003年度予算では財政赤字はGDP比3.9%に低下する見込みであった。しかし、イラク戦争など世界経済の不透明な情勢による国内経済への影響を考慮し、景気刺激策を近々発表するとしており、財政赤字はさらに拡大するものと見込まれる。
 金融政策については、2001年9月以降、政策金利(3か月物市場介入金利)は5.0%のまま据え置かれている。通貨リンギは98年9月以降1米ドル=3.8リンギに固定されている。中央銀行は2003年4月、国内のビジネス環境を改善するため、外資企業による資金調達に対し50%を国内銀行から借り入れることとしていた規制を撤廃するなど、外資企業の資金調達や企業の輸出代金などの外貨保有に関する規制を一部緩和した。


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