<2002年の経済>
2002年の経済成長率は、通年では前年比2.6%増となった。1〜3月期はアメリカ経済減速の影響を受けて前年同月比0.5%減と落ち込んだが、10〜12月期には5.0%増と急速な回復をみせた。しかし、国内需要は減少しており、民間消費は年平均1.6%減、総固定資本形成は同4.4%減となった。景気を支えたのは輸出で、2002年後半から中国向けの輸出が増えたことや、ドル安の下でドルペッグしている香港ドルが他のアジア通貨に比べて安くなったことから、輸出の競争力が高まった。
物価をみると、消費者物価上昇率は中国本土からの低価格製品の流入等から2001年後半より前年比1%台の下落となり、デフレが続いている。失業率は7.3%に上昇し、80年代の統計開始以来、最高値となった。
<2003年の経済見通し>
2003年の経済成長率は、輸出が牽引する形で3%程度(民間機関25社の平均2.8%(2003年4月時点))となる見込みである。民間機関の見通しは、半年前(2002年10月時点3.4%)に比べて下方修正されている。
2003年3月からの重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行が香港経済に大きな打撃を与えている。4月現在、既に、香港国際空港発着便の大幅な減少、ホテル稼働率の低下等、航空、ホテル、飲食業を中心とした観光分野での減収が見込まれている。更に、健康食品、保健用品等一部の商品を除いて小売売上は落ち込んでいる。これを受け、2003年のGDP成長率を1〜2%台に下方修正する見方が多くなってきている。また、今後の世界経済の動向によっては輸出の伸びが一層鈍化し、成長の足を引っ張るおそれもある。
<財政金融政策の動向>
財政は、返還以来財政収支の赤字が続いており、2002年度にはGDP比5.5%となった。香港政府は財政再建目標として、2006〜2007年度までに経常ベースの財政収支の均衡を達成、公的支出の削減(GDP比、2002年度22.3%→20%)を行うとしている。
歳入増加策としては、個人所得税、法人税、自動車登録税、空港利用税等の税率を引き上げること、新たに出域税(香港を出国(域)する度に18香港ドルを徴税)等を設けることによって、140億香港ドル(GDP比1.1%)増を予定している。歳出削減のためには、公務員数の削減、新規採用の凍結、給与削減などを行い、200億香港ドル(同1.6%)を削減することとしている。
根本的な財政再建策として、消費税(GST)の導入が議論されているが、民間消費を更に悪化させかねないとして、結論は出ていない。
今後の経済政策としては、「大きな市場と小さな政府」、「香港を華南地域の中核都市に位置付ける」、「人的資源とインフラの開発」、「重点産業(金融、運輸関連、観光業)の質の向上」、「雇用機会の拡大」を挙げている。これらは現状の外需に依存した経済構造から、中国本土からの物的・人的資源を取り込んだ、内需主導型経済への転換を図るものである。