<2002年の経済>
2002年の経済成長率は前年比1.2%となった。2001年に減速した経済は2002年年初に持ち直しの傾向が見られたが、世界経済の回復が遅れる中で、輸出の減少、設備投資の減少等から成長率は2年連続の減速となった。個人消費は比較的堅調に増加して景気回復の中心役であったが、失業率が高水準で推移する中で、年末には消費の伸びも鈍化した。
<2003年の経済見通し>
2003年は1%程度の経済成長が見込まれる。政府は2002年の景気減速の動きを受けて、2003年度予算の前提である経済成長率2.5%の強気見通しの達成が困難となったことを認めて、1.3%まで下方修正した。なお、民間機関24社による見通しは平均1.4%となっており、2002年10月時点の2.5%から下方修正されている。
失業やリストラが増加し、厳しい雇用環境が続く中で、2002年の経済を支えていた個人消費の伸びも、このところさらに鈍化している。政府は、長期失業者を雇用した雇用主に対する補助金の適用条件緩和や、生活保障手当てと勤労所得の二重取りを認めて失業者の再就職へのインセンティブを高める等、雇用拡大に向けた措置を講じていくこととしている。また、2003年度予算においては、2002年中に行った所得税の5%減税に追加して、さらに1%上乗せされ、税率引き下げの形で所得税減税が実施されている。これらの施策によって個人消費がどの程度回復するかが注目される。
下方リスクとしては、世界経済の回復の遅れやユーロ高の影響による輸出のさらなる減少や、企業景況感の悪化による設備投資の回復の遅れ、また、失業者の増加等が消費者マインドに悪影響を与え消費を抑制する可能性等があげられる。
<財政政策の動向>
2002年の財政赤字は(対GDP比)3.1%となり、「安定と成長の協定」で定める3%の上限を超えた。フランス政府は欧州委員会に対して2002年の財政赤字を3.0%と報告していたが、この数字にはRFF社(仏鉄道のインフラを整備する会社)への資本移転分13億6200万ユーロ(対GDP比0.09%)が含まれていなかった。欧州委員会はこれを財政支出と判断し、これを3.1%に修正して公表した。
景気減速が続き、歳入の減少が懸念される中、メール経済財政産業大臣は2003年の財政赤字を3.4%とする予測を明らかにした(2003年3月)。2003年度予算における2.6%の見通しから大幅に修正したが、景気回復を優先させるため、歳出削減と増税の可能性は否定している。ただし、今後財政赤字が3.4%を上回ると懸念される場合には歳出削減も選択肢であるとし、また、2004年の財政赤字は3%以内に抑えるとの方針を表明した。
今後、ポルトガル、ドイツに続く財政収支の改善勧告が発動される見通しとなっている。