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14  ユーロ圏    Euro Area

ユーロ圏経済のこれまで

<2002年の経済>
 2002年の経済成長率は、0.8%となった。2001年10〜12月期に8年ぶりのマイナス成長を記録した後、2002年前半にはプラス成長に転じたものの、そのテンポは緩やかなものにとどまった。年後半から景気は減速した。個人消費は弱含み基調にあり、生産は減少傾向を示しており、固定投資は減少が続いた。2002年に入って改善を示していたヨーロッパの製造業及び消費者の信頼感指数は、ユーロ高や株安等の影響から年後半には低下した。
 ユーロ圏の失業率は、2001年を底に以後高まりを示している。物価は、おおむね安定基調に
 あるが、総合消費者物価指数(HICP)上昇率は前年比2%以下とする目標値をやや上回る水準で推移している。

ユーロ圏の主要経済指標

<2003年の経済見通し>
 2003年は1%程度の成長が見込まれる。欧州委員会は、2002年秋に1.8%の成長とした見通しを1.0%へ下方修正した。
 成長を支える要因としては、賃金上昇が抑制されていることや、設備投資に一定の更新投資が見込まれることなどから、企業マインドが改善すれば、投資へとつながる可能性がある。物価が安定していることから、実質可処分所得の増加が消費回復へつながることも期待されることなどが挙げられる。
 下方リスクとしては、アメリカ経済の回復力が再度弱まってきていることや、2002年秋以降のユーロ高を主因とする域外輸出の伸びの鈍化等から生産、投資が抑制される可能性がある。

<金融政策の動向>
 ユーロ圏の金融政策について欧州中央銀行(ECB:European Central Bank)は、ユーロ圏内の経済成長の減速に対処することなどから、2002年12月と2003年3月の2度にわたり利下げを行い(合計0.75%ポイント)、政策金利を2.75%とした。
 3月中旬には臨時の声明を発表し、イラクに対する武力行使で混乱が予想される経済や金融市場の安定に向けて、必要に応じて行動する用意があることを示したが、これは資金需要に応じて機動的に流動性を供給することなどの方策を念頭に置いているものとみられた。


コラム EUの東方拡大

●EU15か国が最大28か国へ
 EU(欧州連合)(1)は約50年前に6か国の原加盟国(2)で結成された欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を起源とし、数次にわたり拡大・発展を続けてきました。今回の第6次拡大では更に東方へと拡大します(図1)。東欧諸国を中心に、キプロス、マルタ、トルコを加え総勢13か国が加盟予定・候補国となっています。
 EUへの加盟には3つの基準(コペンハーゲン基準)(3)があり、これらを全て満たすことがEU加盟の前提となります。

●「大欧州」の成立
 EUの東方拡大により東の境界は旧ソ連諸国と隣接し、アメリカに比肩する「大欧州」が成立します。今回の大規模な第6次拡大の状況をみると()、EUの人口、領域は、2004年5月に10か国が加盟して25か国となった場合で約2割増の4億6千万人、400万km2となります。これはアメリカの人口の1.6倍、国土の41%に相当します。さらに、ルーマニア、ブルガリア、トルコまで加盟して28か国となった場合、人口、領域は現在より5割から6割増加します(アメリカの人口の2倍、国土の53%に相当)。
 しかしながら、こうした人口と領域の拡大に対しGDPの規模は10か国加盟で4.6%の増大、13か国加盟でも7.1%の増大に過ぎません(2001年で計算)。1人当りGDP(2001年)をみると、最高のルクセンブルクと最低のブルガリアでは25倍もの格差があります。

●所得格差の動向(図2)
 現在のEUを構成する15か国について、1人当り名目GDPを1991年と2001年で比較してみると、この10年間に1人当り名目GDPはEU15か国平均で約1.5倍へと増加しました。とくに、ポルトガル、ギリシャなど1人当り名目GDPの低かった国をみると、この間にそれぞれ1.8倍、1.7倍と平均増加倍率を上回っています。他方、ドイツ、フランス、イタリアなどでは、1.2〜1.4倍程度にとどまっています。このようにEU域内において経済格差は平準化してきていることがみてとれます。今回の新規加盟においても、当初は域内の経済格差が大きいものの、長期的には次第に格差は平準化していくのではないかと期待されます。
 


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