<2002年の経済>
2002年の景気は拡大し、経済成長率は通年で8%となった。2002年11月の中国共産党大会(5年毎の開催、胡錦涛総書記就任)に向けて年初より積極的な財政政策が行われた。アメリカ向けを中心とする輸出の増加を背景に、鉱工業生産の増加が景気を牽引した。さらに、2001年11月にWTO加盟が実現したことにより、2002年1月から関税率が引き下げられたことや、外資系企業の輸出規制が緩和されたことが、輸出の拡大に繋がった。また都市部の経済発展により、消費が拡大したことも挙げられる。
しかし、供給超過による製品価格の下落は2001年より続いており、消費者物価が前年を下回る状況が年間を通してみられた。また国有企業改革を起因とした雇用調整が行われたことにより、失業率(都市部)は2001年末に3.5%であったのが2002年末には4.0%まで高まった。
<2003年の経済見通し>
2003年の経済成長率は、7%前後になる見込み(政府見通し7%前後、民間機関25社の平均7.4%(2003年4月時点))。民間機関の見通しは半年前(2002年10月)と同レベルである。
成長を支える要因としては、個人消費が堅調に推移するとみられるほか、輸出の増加を背景に、生産が引き続き拡大するとみられる。また西部大開発に示される政府の積極財政政策と外国資本流入の急増により、投資は引き続き高い伸びが見込まれる。2002年にはデフレが続いていたが、2003年に入ってからは原油価格上昇の結果、製造業製品価格が上昇するなど消費者物価は上昇傾向にある。
今後の下方リスクとしては、対外的にはアメリカ経済の先行き不透明感が強まり世界経済が伸び悩めば、輸出に悪影響を与えることが懸念される。国内では、国有企業の大幅な人員削減が今後も継続して行われることから、失業率の悪化が懸念される。しかし同時に、物価下落の原因となる過剰生産を克服するためには、国有企業の更なる抜本的な構造改革が必要である。また、重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行による不透明感も拭えず、輸送業、観光業に悪影響を及ぼす可能性がある。
<財政金融政策の動向>
2002年の財政赤字がGDP比3.0%となったことから、2003年は赤字削減のため、建設国債発行額を前年よりも100億元削減し1,400億元(GDP比1.4%)としている。しかし今後も積極財政政策は行うこととしている。2000年から実施されている西部大開発計画では、中西部地域へ重点的に投資を行い、内陸部の経済発展を促し、雇用促進と内需の拡大を目指している。また、今年は個人消費の拡大政策に重点をおき、公務員給与の引き上げと新規就労機会を800万人分作る目標を設定し、都市部のレイオフ労働者や低収入層への対策に努めている。
ただし、WTO加盟に伴う関税引き下げ、金融保険業の営業税率引き下げ、西部大開発の優遇措置政策により税収の増加は少なくなることが予想され、2003年の税収は5.1%増とGDP成長率よりも低く見積もられている。
なお、金融政策に関しては特に変化はなく、人民元の切り上げに関する議論には引き続き慎重な姿勢をとっている。