<2001年の経済>
2001年の経済成長率は2.2%となり、前年に比べ減速した。世界経済の減速や対ユーロでポンドが増価したこと等から製造業の生産は低迷したが、中央銀行であるイングランド銀行による金利引下げ等の政策効果もあって、個人消費や住宅投資は堅調に推移した。2001年10〜12月期には、輸出の低迷や企業の設備投資減少等からゼロ成長となるなど景気減速が明らかとなった。
<2002年の経済見通し>
今後、消費の伸びが徐々に鈍化すると見込まれているが、アメリカ景気の回復等に支えられて年央には輸出が回復して、経済成長率(年平均)は2%程度になると見込まれる(政府見通し2.0〜2.5%(2002年度)、民間機関24社の平均1.9%(2001年4月時点)。民間機関の見通しは、半年前(2001年10月時点2.1%)に比べて下方修正されている。
成長を支える要因としては、物価の安定や失業率の低下を背景に個人消費が比較的堅調に推移するほか、ポンド高が是正されつつあり輸出競争力を高めつつあること等が挙げられる。
下方リスクとしては、アメリカ経済のダブルディップによる輸出の伸び悩み、家計へのバランスシート悪化による消費への影響等が挙げられる。
<財政金融政策の動向>
財政は2001年度まで連続して黒字を達成している。政府債務残高も徐々に減少し、2001年度末には3,862億ポンド(GDP比39.0%)となった。政府は今後もこうした財政の健全性を維持することとしている。しかし4月に発表された2002年度の予算は、起業促進策や一層の雇用促進策を新たに盛り込んだこと等から、財政収支は110億ポンドの赤字(GDP比1.0%)になると見込まれている。さらに、企業の投資意欲を促すため研究開発費の税額控除となる対象企業の拡大、キャピタルゲイン課税の軽減等も実施される。他方、国民医療サービスを改善するために2003年度からは国民保険料率が労使それぞれ1%ずつ引上げられ、初年度は約80億ポンドの負担増となる。
金融政策については、2001年2月以降11月まで7度にわたり利下げを行い(合計2.0%ポイント)、政策金利を4.00%とした。2001年11月の利下げについて、イングランド銀行は、国内経済は堅調だが世界的な景気減速が当初の予想より幾分長期化するリスクがあるとしたうえで、消費者や企業の心理の冷え込み、インフレ圧力の弱まりなどを考慮して利下げに踏み切ったとしている。インフレ・ターゲットは2.5%となっている。こうした金融緩和の動きは、需要の下支えにつながっている。