<2001年の経済>
2001年の経済成長率は1.8%となり、前年より1%ポイント程度減速した。これは、世界経済の同時減速を受けて輸出の伸びが大幅に鈍化し、個人消費や設備投資が大きく減速した結果である。同時多発テロ後、企業マインドは顕著に悪化したが、消費者マインドはおおむね底堅く推移した。イタリア経済に占めるIT部門の割合が低いこともあり、今回の世界同時減速はイタリア経済に深刻な影響を及ぼさなかった。労働市場の構造改革が進められており、景気減速下においても雇用の伸びが維持できたことも消費者マインドを支えた。
<2002年の経済見通し>
年前半は緩やかな動きにとどまるが、後半から内需に支えられた回復が実現し、経済成長率(年平均)は1.3%程度(民間機関5社)になると見込まれている。半年前の見通し(2001年10月1.5%)に比べて、わずかに下方修正されている。
2001年末以降、生産が下げ止まりつつある。消費者マインドや企業景況感は、他のユーロ圏諸国に比べて早い改善を示している。年前半の景気は、消費が支えることになるとみられる。その背景として、近年は賃金上昇率が抑制基調で推移し、景気減速下でも失業率は低下傾向で推移していることが挙げられる。世界経済の回復基調が明らかになるに応じて輸出の増加が期待できる一方、金融緩和の中で実質金利は歴史的に低い水準となっており、年後半に向けて設備投資が徐々に回復していくものと期待される。この結果、年後半には2%を上回る成長率になるものと見込まれる。
消費者物価上昇率は、年初に悪天候、ユーロ安、公共料金引上げ等の要因によって2%台半ばの上昇を示したが、賃金の抑制基調が続いているため、年間では安定した動きになるものと見込まれる。
下方リスクとしては、経済に占めるIT分野のウエイトが低いために、ITが先導する世界経済の回復から受ける恩恵が相対的に低くなる可能性を指摘できる。その場合には、設備投資の回復が遅れるものとみられる。
<財政政策の動向>
財政政策は景気中立的に運営され、財政赤字は抑制傾向で推移している。2001年の財政赤字はGDP比1.4%、2002年もほぼ同程度と見込まれている。利払い費の低下から政府債務残高は2001年にGDP比109%程度にまで減少するとみられ、ほぼ10年ぶりの水準に低下する。
2002年には、政府保有不動産の売却益(2001〜2003年の合計でGDP比0.8%程度:欧州委員会)が歳入に繰り入れられているものの、年金支出増や公共事業の増加等に加え、景気減速にともなう自動安定化機能によって財政赤字の大きな改善は期待しにくい。