<2001年の経済>
2001年の経済成長率はマイナス2.0%となり、前年の10.3%からマイナス成長へと転化した。これは、世界経済減速の影響を受けた結果、エレクトロニクスを中心とした輸出が前年比11.6%減と大幅に減少したことに加えて、輸出の減少につれて設備投資や在庫投資も減少したことが主な要因であった。
<2002年の経済見通し>
輸出の増加と製造業の回復を中心に景気が回復し、2%前後の成長になると見込まれる(政府見通し1〜3%)、民間機関25社の平均3.5%(2002年4月時点)。民間機関の見通しは、半年前(2001年10月時点2.7%)に比べて上方修正されている。
成長を支える要因としては、アメリカ経済と世界的なIT関連需要の回復、物価の安定や失業率の低下を背景に個人消費が堅調に推移することが挙げられる。設備投資については、海外からの直接投資流入の本格回復にはしばらく時間がかかるものとみられることから、回復が年後半へとずれこむことも考えられる。
下方リスクとしては、アメリカ経済の回復が弱いものにとどまったり、EU経済の回復が遅れたりする場合に、IT関連輸出の回復の遅れが挙げられる。また企業業績の回復の遅れなどによる失業率の上昇及びこれによる個人消費の停滞が挙げられる。
<財政金融政策の動向>
財政収支は一貫して黒字となっている。2001年2月に発表された2001年度予算は、景気減速を背景に法人税及び個人所得税の減税とビジネスコストの縮減を目指したものとなっていた。同予算の歳入は前年比2.8%増、歳出は0.4%増となっており、財政収支は62億シンガポールドルの黒字を見込んでいた。同時に発表された新税制措置によると、景気への配慮から、法人税の税率引き下げ(2002課税年度から25.5%⇒24.5%)、 個人所得税の税率引き下げ(2002課税年度から所得層別に税率を2〜5%引き下げ)、公共住宅の賃貸料の引き下げなどが決定された。なお、2002年度予算は5月公表予定となっている。
金融政策については、経済の減速とアメリカの利下げに対応して緩和されている。3か月インターバンクレートは2000年12月の2.81%から2002年3月には1.06%へ低下した。