第2章 2025年後半の世界経済の動向(第3節)

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第3節 欧州の景気動向

本節では、主に2025年後半のユーロ圏及び英国経済の動向を概観する。

1.ユーロ圏経済の動向

(ユーロ圏では、景気は持ち直しの動き)

ユーロ圏では、景気はこのところ持ち直しの動きがみられる。2025年7-9月期の実質GDP成長率は、前期比年率1.1%となり、2025年4-6月期から伸び率は加速した(第2-3-1図)。

第2-3-1図 ユーロ圏の実質GDP成長率

2025年4-6月期には米国の通商政策に伴う駆け込み需要のはく落からユーロ圏全体の実質GDP成長率は減速したが、7-9月期は個人消費の伸びが鈍化する中、政府消費と総固定資本形成が成長に寄与した(第2-3-1図(1))。国別寄与度をみると、2024年7-9月期から2025年1-3月期まで、ユーロ圏の3.7%の経済規模にすぎないアイルランドによる押上げが大きく寄与59している(第2-3-1図(2)、第2-3-2図、コラム3参照)。これは第1章でみたとおり、米国のトランプ大統領による医薬品に関する関税措置への言及に伴い、医薬品企業が多く集積するアイルランドから米国への駆け込み輸出が発生したことによるものだが、2025年4-6月期以降はその寄与はなくなり、ユーロ圏の成長はフランスとスペイン60の寄与が大きくなっている(第2-3-1図(2))。

第2-3-2図 ユーロ圏の名目GDPの国別構成比(%)

コラム3 アイルランド経済の動向と統計上の留意点

アイルランドは、歴史的には米国や英国に向けた移民流出国であったが、1990年代後半のITブーム等に伴う急成長(「ケルトの虎」と呼ばれた。)とともに移民流入が多くなり、また、若年人口比率や高等教育進学率も高いことから、労働者の獲得の面で米国等の多国籍企業にとって魅力的な進出先となっている。またEU加盟国であり、約4億5,000万人の消費者市場に障壁なくアクセスできるというメリットがある。さらには英国のEU離脱により、英語を母国語とするアイルランドのEU域内における存在感は大きく高まっている(もう一つの英語公用語国であるマルタの経済規模はアイルランドの25分の1にすぎない。)。EU加盟国でありながら英語圏という希少性は、多国籍企業の欧州本部の設置先として優位性を高めている。

加えて、アイルランドは1990年代以降、法人税率を12.5%61という欧州でも極めて低い水準に設定し、積極的な外資優遇策を展開してきた。これにより、米国を中心とする多国籍企業(IT、製薬、医療機器、金融等)の欧州拠点・本社機能が次々とアイルランドに集積した。

こうした企業集積を背景として、アイルランド経済は外需主導型の構造を持っている。実質GDP成長率を寄与度分解すると純輸出と総固定資本形成の寄与が非常に大きく62、民間消費や政府消費といった国内最終消費の寄与は極めて限定的である(図1)。

図1 アイルランドの実質GDP成長率

特に、総固定資本形成の内訳をみると、無形固定資産(知的財産権等)が大きな比重を占めており、多国籍企業による国際的な知的財産権の移転等63GDPの変動要因となっている(図2)。国際的な会計上の知財移転は総固定資本形成としてGDPに計上される一方64、国内の雇用や生産を直接押し上げる効果は少ないため、アイルランドの実体経済への影響は、極めて限定的である。

図2 アイルランドの総固定資本形成の実質GDP成長率への寄与度

次に輸出面をみると、名目GDPに占める財輸出の比率は約6割とユーロ圏の他国と比較しても突出して高く、アイルランド経済が輸出依存度の高い構造となっている(図3)。その中でも医薬品の占める割合は約4割65であることから、医薬品輸出のGDPに対する比率は24%となり、GDPの約4分の1を占める大きさになる。したがってアイルランドの経済成長率は、国内経済の動向以上に、製薬業の世界的需要動向に左右されやすいこととなる。

図3 ユーロ圏主要国のGDPに占める財輸出の割合

2015年から2024年の医薬品の輸出動向をみると、輸出重量は1.25倍の増加にとどまる一方、名目輸出額では約2.5倍に増加している。重量の伸びを大きく上回る金額の伸びは、輸出される医薬品の単価が上昇していることを示している(図4)。

特に米国向けは2020年以降の輸出額の伸びが顕著であり、2024年には輸出額が2015年の約3倍に達している。米国の医薬品価格66OECD33か国平均の約2.8倍との分析67もあり、米国市場の価格上昇も、アイルランドの輸出額の増加に寄与していると考えられる。第1章で確認したように、現状、医薬品は関税引上げの適用除外の扱いが続くため米国の関税措置による景気下押しは限定的だが、不確実性の高い状態は続いている。医薬品への本格的な関税導入を含め、今後の米国通商政策の動向によっては輸出の下押しリスクが高まる点に留意が必要である。

図4 アイルランドの医薬品輸出

このように、アイルランド経済は多国籍企業、とりわけ知的財産権の移転や医薬品輸出の影響を受けやすい。これらはGDPを構成する投資や付加価値として直接計上されるが、一時的かつ巨額に変動することがあり、GDP統計は実体経済の動き以上に変動しやすい構造となっている。また、その変動率の高さがユーロ圏全体の統計にも強い影響を与えている。ユーロ圏の2025年1-3月期の実質GDP成長率(2.3%)のうち、アイルランドのGDP成長率(33.2%)の寄与率は56.4%に達した(表5)。アイルランド一国のGDPシェアはユーロ圏全体の3.9%にすぎない一方、その成長率の振れ幅の大きさにより、ユーロ圏全体のGDP成長率の半分以上も押し上げたことになる。

表5 ユーロ圏の実質GDP成長率に対するアイルランドの寄与度

アイルランド政府や国際機関も、こうした多国籍企業の活動がGDP統計の変動に及ぼす影響の大きさを認識し、より実態を反映する指標として修正GNIGNI*)68等の活用を推奨している69。修正GNIは、知的財産移転や航空機リース等、必ずしもアイルランド経済の実態を反映しているとは言えないGDPを膨らませる要因を除外する指標であり、アイルランドの国内居住者の所得をより適切に把握することができる。

実際、アイルランドの1人当たりGDPは、ユーロ圏においてルクセンブルクに次ぐ第2位であるのに対し、修正GNIを用いた場合にはドイツに次ぐ第7位となる。この差は、多国籍企業による会計的な取引がGDPを押し上げていることを示している(図6)。

図6 主要国の1人当たりGDP比較

アイルランド経済の成長及び統計動向については、依然として多国籍企業、特に製薬業の寄与が極めて大きい。そのため、GDP等従来の経済指標は実体経済の動向とは関連の薄い会計上の取引の影響を受けやすく、経済実態を精緻に把握するためには修正GNI等補助的な指標の併用が重要である。加えて、最近では米国の関税措置を主因とした輸出の変動が極めて大きく、アイルランドのGDP統計の振れ幅を更に大きくしている。ひいては、アイルランド経済の統計的変動がユーロ圏全体のGDP統計にも波及しており、ユーロ圏GDPを評価する際にはこのような外部要因の影響を十分に考慮する必要がある。

(個人消費は持ち直しの動きが続く)

ユーロ圏の個人消費は、2024年以降、持ち直しの動きが続いている(第2-3-3図)。一方で、足下の動きについて実質小売販売額(自動車除く)を確認すると、米国の政策動向を受けた不透明感の高まりから消費者信頼感(消費者マインド)が停滞していることを背景に、2025年5月以降横ばいで推移している(第2-3-4図、第2-3-5図)。

第2-3-3図 ユーロ圏の家計消費
第2-3-4図 ユーロ圏の実質小売
第2-3-5図 ユーロ圏の消費者信頼感

次にユーロ圏全体の自動車新規登録台数を確認すると、高額商品購買意欲の低迷が続く中(第2-3-5図(2))、感染症拡大前の2019年の水準を下回る傾向が継続している(第2-3-6図)。

第2-3-6図 ユーロ圏の自動車新規登録台数

実質家計可処分所得は増加しているものの、家計の先行き景況感の悪化、貯蓄志向の高まりにより(第2-3-5図(1)、第2-3-7図)、貯蓄率は上昇傾向となっており、2019年平均を上回る高水準となっている(第2-3-8図)。

以上のとおり、消費者マインドが停滞し、貯蓄率が高い状況ではあるが、欧州委員会70は、2025年秋の経済予測において、貯蓄率が2027年まで緩やかに低下するとの予測の下、民間消費が経済成長を安定的に支えると見通している。

第2-3-7図 ユーロ圏における消費者の貯蓄志向
第2-3-8図 ユーロ圏の実質家計可処分所得と家計貯蓄率

(設備投資は持ち直している)

ユーロ圏の設備投資は持ち直している(第2-3-9図)。足下では2023年後半以降に減少がみられた機械・機器投資に持ち直しの動きがみられる。

ユーロ圏では、2021年2月に感染症拡大からの経済回復支援を目的とした「復興・強靭化ファシリティ(Recovery and Resilience Facility71」(以下「RRF」という。)が設立され、以降EU加盟国へ助成金や融資を提供している。RRFの助成金割当の70%は「人口」、「1人当たりGDP」、「2015年から2019年の平均失業率」、30%は「2020年の実質GDPの落ち込み」、「2020年から2021年の実質GDPの累積損失」により決定される。以上のような基準により、EUにおいて比較的失業率が高く、感染症拡大時の経済的損失が大きかったイタリア、スペインではRRF割当額対GDP比が大きくなっており、他の主要国に比べて設備投資の著しい増勢がみられる(第2-3-9図(3)、第2-3-10図)。こうしたRRFによる支出の下支えもあり、ユーロ圏の設備投資は2021年以降増加傾向となっている。

第2-3-9図 ユーロ圏の実質設備投資
第2-3-10図 RRF割当額(対GDP比)

先行きも期待感がみられている。ユーロ圏主要国の中でもドイツでは、企業の借入金利の上昇や、中国等の主要輸出相手国における需要低下に伴う財輸出の減少を背景に、企業の設備投資マインドが低下し、2023年以降は民間部門を中心に設備投資が弱含んでいる(第2-3-11図(1))。こうした状況も背景に、ドイツ政府は2025年3月に「インフラ分野における投資需要の高まり72」と「安全保障構造の根本的な変化73」を理由に基本法(ドイツの憲法)を改正し、(1)交通インフラ等を含む各種インフラや気候変動対策を対象にした特別基金74、(2)名目GDP比1%を超える防衛費、の2点について「債務ブレーキ」75の対象外とすることを決定した76。2025年7月には「投資ブースター」と呼ばれる投資促進税制77を開始したこともあり、企業の景況感には改善がみられ(第2-3-11図(2))、政策効果の発現時期には留意する必要があるものの、ドイツの設備投資は回復していくことが期待される(第2-3-12図、第2-3-13表)。

ユーロ圏の設備投資については、今後、こうしたドイツにおける政策効果の発現や、RRF等のEU基金による下支えから、公的投資を中心に持ち直しが続くことが期待される。

第2-3-11図 ドイツの実質設備投資、企業の景況感
第2-3-12図 ドイツ連邦政府の公的投資計画
第2-3-13表 インフラと気候中立のための特別基金の内訳

(財輸出は足下でおおむね横ばいで推移)

次に、ユーロ圏の輸出動向について、財・サービス別の動きをみると、サービス輸出が2021年以降継続して増加傾向にある一方、財輸出は、中国の需要減退や欧州自動車産業の競争力低下78を背景に、2022年7-9月期以降停滞している(第2-3-14図)。

財輸出の2025年の動向を確認すると、4月以降米国向け駆け込み輸出のはく落がみられたものの、足下ではおおむね横ばいで推移している(第2-3-15図)。第1章でみたとおり、EUと米国間においては、2025年7月27日に関税協議合意がなされたものの、米国側の対応により貿易動向が変動する状況は継続しており、米国の通商政策の動向による影響は予断を許さない。

第2-3-14図 ユーロ圏の実質輸出
第2-3-15図 ユーロ圏の財輸出の推移(主要輸出相手国別)

(労働需要は減少傾向にあるものの、依然として高い水準にある)

ユーロ圏の労働需要を求人率から確認すると、2022年4-6月期をピークに求人率は低下傾向にあるものの、感染症拡大前の5年間平均と比較すると依然として高い水準にある。一方、失業率は足下で6.4%と横ばいで推移しており、ユーロ導入以来の低水準が継続している(第2-3-16図)。

第2-3-16図 ユーロ圏の雇用情勢

労働参加率の傾向については、上昇傾向にあり、足下では75.8%と感染症拡大前の2019年の水準を上回って推移している(第2-3-17図(1))。一方、労働力人口の増勢は鈍化しており、外国出身者(ユーロ圏内を含む出生国以外で働く労働力)の寄与が大きくなっている(第2-3-17図(2))。

第2-3-17図 ユーロ圏の労働参加率と労働力人口

また、賃金動向をみると、ユーロ圏の名目賃金上昇率は2021年7-9月期以降堅調に推移してきたが、2024年1-3月期以降横ばいで推移している(第2-3-18図(1))。

欧州中央銀行(以下「ECB」という。)が各国の団体交渉協定を基に公表している賃金トラッカーによれば、2026年の賃金上昇率は2023年から2025年と比較して、緩やかに推移することが見込まれる(第2-3-18図(2))。

第2-3-18図 ユーロ圏の賃金と物価

(消費者物価上昇率は2%程度で安定的に推移)

消費者物価上昇率(総合)は、2025年2月以降2%程度79で安定的に推移している(第2-3-19図)。2022年2月に起きたロシアのウクライナ侵略を契機にエネルギー、食料品価格が物価の主な上昇要因となっていたが、足下ではおおむね横ばいで推移している(第2-3-20図)。エネルギー価格については2023年後半以降消費者物価の低下に寄与していたが、足下ではマイナス寄与は縮小している(第2-3-19図、第2-3-20図(1))。

第2-3-19図 ユーロ圏の消費者物価上昇率(総合)
第2-3-20図 ユーロ圏のエネルギー価格、食料品価格の推移

なお、ECBが2025年12月の政策理事会において、「不安定な貿易環境の影響により、インフレ見通しは依然として不透明である。米国による関税の引上げでユーロ圏の輸出需要が減少し、過剰生産を抱える国々からの輸出がユーロ圏に流れ込む場合、インフレの低下圧力を強める可能性がある」との認識を示すなど、米国の通商政策を受けた中国80からの輸入増加によるユーロ圏内の物価への影響が懸念されている。ただし、これについて、中国の輸入割合が増加している自動車の消費者物価を例にみると、現時点では価格に大きな変動はみられていない(第2-3-21図、第2-3-22図、第2-3-23図)。

第2-3-21図 ユーロ圏の中国からの財輸入量の推移
第2-3-22図 ユーロ圏の自動車輸入量に占める中国の割合
第2-3-23図 ユーロ圏の新車価格(消費者物価)の推移

ECBは2025年6月の利下げを最後に4会合連続で政策金利を据え置き)

ECBは、消費者物価上昇率が安定的に2%台に落ち着いてきたことを受けて2024年6月以降、政策金利の引下げを継続してきたが、2025年6月に7会合連続となる0.25%ポイントの引下げを行って以降は、4会合連続で政策金利を据え置いており、現在の預金ファシリティ金利は2.00%となっている81(第2-3-24図)。ECBは、2025年2月に中立金利の範囲を1.75%~2.25%と推計したが、ECBのラガルド総裁は不確実性が高い現状において中立金利は機能しないとの認識を示している。

第2-3-24図 ECBの政策金利の推移

また、経済の見通しについては、2025年12月の理事会において、経済成長は回復しているとの認識を示し、サービス業主導の成長が当面継続するとしている。さらに、今後はドイツを中心とするインフラや防衛分野における政府の大幅な支出が経済成長を押し上げると見通している。今後の金融政策については、依然として良い立ち位置(in a good place)にあるとして、あらゆる選択肢を排除せず、データに依拠し、会合ごとに適切な政策スタンスを決定するアプローチをとるとしている。

Box. デジタルユーロ導入と決済手段の動向

ユーロ圏においては、ECBが2020年10月に中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)(以下「CBDC」という。)である「デジタルユーロ」の発行の可能性に関する報告書を公表して以降、現金に代わる電子決済手段として、デジタルユーロの導入に向けた検討が進められてきた。CBDCは個人や一般企業を含む幅広い主体の利用を想定した「一般利用型CBDC」と金融機関間の大口資金決済に利用することを主な目的とした「ホールセール型CBDC」に大別される82が、デジタルユーロは前者の「一般利用型CBDC」である。

2025年10月、ECB理事会は、2023年11月に開始したデジタルユーロ決済に関するルールブック案の検討等の段階が終了し、技術開発や立法準備等の段階に進む決定を公表した。2026年中に法律が制定されれば、2027年に試験運用を開始し、2029年にデジタルユーロが発行される可能性があるとしている83

ECBがデジタルユーロの導入を進める背景の一つに、決済手段におけるデジタル決済の増加がある。ユーロ圏ではデジタル決済の利用が増え、現金取引が減少している(図1)。一方、デジタル決済のシステムは非欧州企業のカードやプロバイダーに依存していることから、現金を補完する公共のデジタル決済手段の必要性が高まっており、デジタルユーロにより、高いプライバシー性を保持しながら、インターネットへの接続がなくても現金のように支払うことを可能にするとしている(表2)。

図1 決済手段の動向(POSデータ)
表2 CBDCの基本的特性とデジタルユーロの概要

なお、他の主要国でもCBDCの検討は進められているが、国によって検討状況は大きく異なる(表3)。中国では既に越境決済が行われる等、最も実証実験が進んでおり、ユーロ圏は中国に次いでCBDCの正式発行に近づく可能性がある。

表3 主要国における一般利用型CBDCの検討状況

コラム4 ドイツの電気自動車

第1章で述べたとおり、米国の関税措置によって、ドイツ系メーカーの自動車販売は米国市場で急速に減少している。また中国向け輸出も落ち込んでいることから、ドイツでは自動車産業の低迷がみられる。本コラムでは、ドイツの電気自動車(EV85)の生産動向とドイツ経済への影響について検討する。

EU域内の新車登録台数の内訳をみると、2024年にはHEVPHEVBEVの販売シェアが、ガソリン車とディーゼル車を抜いて過半を占める状態となり、さらに2025年には新車の4台に1台がPHEVBEVとなった(図1)。

図1 EU域内のエンジン別新車登録台数(シェア)の推移

この背景には、欧州委員会は2035年までにHEVを含む内燃機関(ICE)車86の新車販売を原則禁止する方針87を打ち出しており、各国による購入補助金や税制優遇措置88によりEVへの切り替え政策がある。このような情勢を受けて、ドイツ国内においても内燃機関車からEVへの生産切り替えを進めているものの、EVの生産シェアは2024年で33.2%、2025年(1月から10月累計)では、39.8%といまだ5割に届いておらず、EV化への対応が構造的な課題となっている(図2)。

こうした状況を踏まえ、ドイツのメルツ首相は、EUに対して2035年までに内燃機関車の新車販売を禁止する計画の緩和を求め、2025年12月に、欧州委員会は緩和方針を発表した。

図2 ドイツのエンジン別自動車生産台数の推移

一方で中国は、リチウムやコバルト等EVバッテリーの主要原材料89の供給国90であることから(図3)、中国系メーカーは相対的に安価なバッテリーを生産でき91、価格競争力の高い車種を投入して海外市場での存在感を急速に拡大している。EU域内の中国系自動車メーカーの登録台数は2025年に前年比約2.8倍となった(図4)。欧州委員会は2024年から中国から輸入されるBEVに最大45%の関税を課している92が、PHEVにはこの関税が適用されないため、HEVPHEVが伸びをけん引していると考えられる。

図3 主要な鉱物資源の精製国
図4 EU域内のメーカー別自動車新規登録台数(2025年)

さらに最近では、中国はレアアースや半導体に関する輸出管理措置(第1章Box参照)を強化しており、ドイツの自動車製造のサプライチェーンに関連する様々な品目にも影響を及ぼしている。他国への依存度が高い鉱物資源の供給リスクは、米中間の貿易競争等、不安定な地政学的環境の下で一段と高まっている。このような状況を受け、欧州委員会は2023年に「欧州半導体法93」、2024年には「重要原材料法94」を制定し、第三国依存からの脱却を図っているが、構造的な問題は解決できていない。

その象徴的な事例であるネクスペリア社(オランダに本社を持つ中国資本企業)の半導体の輸出規制については、ドイツの自動車産業にも波及し、主要生産拠点では一部ラインの停止や短時間労働の検討が進められている95。業界団体は、操業停止が広がる可能性を警告しており、世界的なサプライチェーンの脆弱性が改めて浮き彫りになっている。

EV化の進展、中国メーカーの台頭、鉱物資源の供給リスクという複数の構造的要因により、ドイツの自動車メーカーでは雇用調整が始まっている。2024年にはドイツのフォルクスワーゲン社(Volkswagen)(以下「VW」という。)が操業以来初となる国内工場閉鎖を発表し、その後も各社で人員削減が発表96される等、雇用調整が業界全体に及び始めている。実際の自動車製造業の雇用者数の推移をみると、2024年初めには約78万人であったが、同年後半から減少が加速し、2024年12月には約76万人、2025年8月には約71万人まで減少している(図5)。対象は派遣や契約社員のみならず、正規雇用にも及んでいる。

図5 ドイツ国内の自動車製造業の雇用者数

EV化や自動運転関連のハードウェア・ソフトウェア分野の進展により、国際競争が激化し、ドイツの自動車関連企業が保有していた内燃機関を始めとする従来からの技術的優位性が揺らいでいる。こうした動きは、雇用調整の圧力を高める要因となっており、関連する労働者や地域経済への影響が懸念される。自動車産業を中心に、構造的な課題が顕在化しており、今後も米国の政策動向や地政学的リスクの高まりに注意しつつ、時代に即した産業構造の転換とサプライチェーンの強靭化が求められる状況である。

2.英国経済の動向

(英国では、景気の持ち直しが緩やかになっている)

英国経済の動向を実質GDPの推移から概観97する。英国では2022年後半以降、急激な物価上昇と政策金利引上げ等により、実質GDPはおおむね横ばいで推移してきたが、消費者物価上昇率の低下に伴う実質賃金の上昇等を受けて内需が持ち直したことに加え、好調な輸出がけん引する形で外需も堅調に推移し、実質GDP成長率は2024年1-3月期以降、7四半期連続でプラスを記録している98。ただし、2025年7-9月期には外需が増加からおおむね横ばいに転じたことに加え、実質賃金上昇率の鈍化や失業率の上昇とともに内需も横ばい傾向となったことで実質GDP成長率の伸びは鈍化しており、景気の持ち直しが緩やかになっている(第2-3-25図)。

第2-3-25図 英国の需要項目別の実質GDP

(消費は持ち直している)

英国の個人消費を実質GDPの家計消費からみると、2022年10-12月期以降は弱い動きが続いていたものの、2023年10-12月期以降、持ち直しの動きに転じている。2023年の後半以降は消費者物価上昇率の鈍化と名目賃金の上昇を受けて実質賃金の上昇率がプラスで推移しており、サービス、半耐久消費財、耐久消費財の消費は堅調に推移している。総じてみれば、消費は持ち直している(第2-3-26図)。

第2-3-26図 英国の家計消費

次に、実質小売販売額(自動車除く)の動向を確認すると、2021年秋以降、感染症収束に伴う経済活動の再開とウクライナ侵略に伴うエネルギー価格等の高騰を受けた消費者物価の上昇により、実質小売販売額は低下傾向が続いてきた。2023年後半以降は消費者物価上昇率の鈍化と名目賃金上昇を受けて実質賃金の上昇率がプラスで推移しており、実質小売販売額も持ち直している(第2-3-27図)。

第2-3-27図 英国の実質小売

また、自動車の新規登録台数をみると、感染症拡大による供給制約が既に解消されていた2024年も年間を通じて2019年(感染症拡大前)を下回る水準が続いているものの、2025年7月以降は2019年に迫る水準となり、2025年10月には14.5万台と2019年10月の14.3万台を上回ったことから、回復の兆しがみられる(第2-3-28図)。2025年7月から始まった英国政府のEV購入助成制度99により、PHEVBEV等の購買需要が喚起されたことで、当該車種において前年比30%を超える販売台数の伸びを記録したことが全体の販売台数増加の主因とみられる。

第2-3-28図 英国の自動車新規登録台数

こうした消費の持ち直しを説明する要因として、実質賃金の動向が挙げられる。2022年4-6月期以降は消費者物価上昇率が名目賃金上昇率を上回ったことで実質賃金上昇率はマイナスで推移していたが、その後消費者物価上昇率が徐々に鈍化したことを受け、2023年4-6月期以降実質賃金上昇率はプラスで推移していることが確認できる(第2-3-29図)。もっとも、足下では消費者物価上昇率が名目賃金上昇率に迫る4%前後の伸びとなっていることから、実質賃金上昇率も1%を割り込む水準となっている。

第2-3-29図 英国の実質賃金と物価

消費者マインドを示す消費者信頼感指数を確認すると、家計の先行きに対する消費者信頼感は消費者物価上昇率の鈍化傾向を受けて2024年初来改善が続き、DIは2024年6月にはプラスとなった(第2-3-30図(1))。経済見通しは2024年12月以降、米国の政策動向を受けた先行き不透明感も重なり悪化したが、2025年5月の英米通商合意を機に改善した。その後は、同年11月末に英国政府が公表する2025年秋季予算での負担増政策(後述)に対する警戒感等から、家計の先行き、経済見通し、高額商品購買意欲全ての項目で悪化がみられたが、前年比でみれば全体DIはマイナス18ポイント前後でおおむね横ばいの傾向が続いている。英国の消費者マインドの改善ペースが弱い背景には、依然として高い水準にとどまる政策金利100と、これに伴うローン金利の高止まりもあいまって、高額商品購買意欲の改善の動きが鈍いことがあると考えられる(第2-3-30図(2))。

第2-3-30図 英国の消費者信頼感指数

消費者マインドの改善ペースが弱く、家計貯蓄率は感染症拡大前(2016~19年平均)を上回る水準で引き続き推移している。家計貯蓄率は感染症収束に伴い低下していたが、2022年半ば以降は緩やかな上昇傾向に転じ、2025年4-6月期には10.7%となっている(第2-3-31図)。経済の先行きに対する見方が慎重になっていること(第2-3-30図(2))や依然として高い水準の政策金利、米国の政策動向に伴う先行き不透明感等が、貯蓄志向の高まりにも現れていると考えられる。

第2-3-31図 英国の家計貯蓄率

以上のように、経済見通しの悪化や家計の先行き不透明感から消費者マインドの改善ペースには引き続き弱さがみられるものの、実質賃金がプラスで推移する中、実質小売販売額や自動車新規登録台数は堅調に推移している。総じてみれば、英国の消費は持ち直しているといえよう。

(設備投資はおおむね横ばいとなっている)

設備投資についても、政策対応を受けた101脱炭素化やデジタル化に向けた設備投資需要から、2021年以降、知的財産生産物投資、機械・機器投資及び構築物投資のいずれも持ち直してきた(第2-3-32図)。2022年以降の政策金利引上げの継続やウクライナ侵略等に伴う経済の先行き不透明感から、2023年半ば以降は機械・機器投資及び知的財産生産物投資の伸びが減速した。

2024年7月にスターマー政権が発足し、先行き不透明感の緩和や政策金利の引下げを受けた借入負担の軽減もあいまって持ち直しの動きがみられたが、米国の政策動向の影響を受けた不透明感の高まりから、英国の設備投資はおおむね横ばいとなっている。

第2-3-32図 英国の実質設備投資

設備投資マインドをみると、2025年1月以降は国民保険料の雇用主負担の増加に伴う企業負担の増加や、米国の政策動向の影響を受けた不透明感の高まり、世界経済の減速懸念から、DIは投資意欲が横ばいであることを意味するゼロ以下に悪化し、米国との関税協定に合意した後も、足下にかけて設備投資マインドに大きな改善はみられない(第2-3-33図)。

第2-3-33図 英国の設備投資マインド

(財輸出は弱含み、サービス輸出はおおむね横ばいとなっている)

続いて、輸出の動向を確認すると、2020年1月のEU離脱とその後の感染症拡大があいまって、2020年4-6月期に財輸出、サービス輸出がともに大きく減少した。その後、対GDP比(2024年)で12.8%を占める財輸出は、2022年後半の一時的な増加を除き102減少傾向にある。2024年10-12月期には、米国向け輸出の増加を背景に一時的に増加に転じたものの、その後は弱含んでいる103。対GDP比(2024年)で16.6%を占めるサービス輸出も、感染症収束を受けた海外からの観光客の回復等から好調に推移していたが、2025年7-9月期以降はおおむね横ばいとなっている104(第2-3-34図)。

第2-3-34図 英国の実質輸出

こうした輸出の動きについて、相手国別の動向とともに分析すると、2024年の主要輸出相手国は、米国(構成比16.9%)、ドイツ(同8.4%)、オランダ(同7.4%)、アイルランド(同6.6%)、フランス(同6.2%)、中国(同5.0%)となっており、財輸出全体としては2023年12月以降緩やかな減少傾向にある中で、米国向け財輸出は2024年10月から2025年3月にかけて大きく増加した(第2-3-35図)。2025年1月の第二次トランプ政権発足前後に起きた、関税引上げを想定した駆け込み輸出の影響とみられる。その後は駆け込み影響のはく落で減少傾向が続いており、英国財輸出全体を下押ししている。なお、中国向け輸出は大きく変動している時期105もあるが、2023年以降は停滞しており横ばい圏内が続いている。

第2-3-35図 英国の財輸出の相手国の構成比と財輸出(主要相手国別)

次に、サービス輸出の動向をみると、主要輸出相手国は米国(構成比26.7%)、ドイツ(同5.8%)、アイルランド(同5.2%)となっている。相手国別の推移をみると、米国向けが一貫して緩やかな増加傾向にあり、ドイツ向けでは足下で減少傾向がみられるものの、アイルランド向けも2024年以降増加が続いている。ただし、足下のサービス輸出全体としては、おおむね横ばいとなっている(第2-3-36図)。

第2-3-36図 英国のサービス輸出の相手国の構成比とサービス輸出(主要相手国別)

先行きについては、英国は名目GDPに占めるサービス輸出の割合が財輸出より高く106、サービス輸出には追加関税が課されていないため、米国の政策動向による直接的な影響は相対的に小さいといえるものの、ユーロ圏や世界経済の変動を通じた間接的な影響には留意する必要がある。

(労働需給のひっ迫は緩和)

英国の労働市場については、まず、雇用者数は2023年以降おおむね横ばい傾向で推移していたが、2024年8月以降は減少傾向で推移している(第2-3-37図)。

第2-3-37図 英国の雇用者数

労働参加率については、感染症拡大後、男性の労働参加率が精神疾患等長期疾病に伴う非労働力化等の影響を受け、2019年10-12月期から2021年1-3月期にかけて低下したこと等から、男性の労働参加率は感染症拡大前の水準には戻っていない(第2-3-38図)。しかし、全体としては2024年半ばから上昇基調にあり、ユーロ圏と比較しても高い水準を維持している。

第2-3-38図 英国の労働参加率

続いて、労働需要の強さを求人率の動向から確認すると、2021年以降、経済活動の再開等を受けて労働需要が増加したことから求人率が上昇していたが、政策金利の引上げを受けた労働需要の減少により低下傾向となった。さらに、2024年10月末に公表された秋季予算において国民保険料の企業負担の増加が決定されると、人件費の高まりを嫌気して雇用を抑制する動きがみられ、2025年1-3月期の求人率は2.3%と感染症拡大前を下回る水準まで低下した(第2-3-39図)。失業率は、低水準にあった2022年に比べ、2023年に入って以降は上昇傾向にあり、感染症拡大期に迫る高さにある(第2-3-40図)。英国の労働需給は緩和傾向にある。

第2-3-39図 英国の求人率
第2-3-40図 英国の失業率

コラム5 英国若年層の雇用情勢と政策的課題

英国は、2020年以降実質GDP成長率が堅調に推移しているにもかかわらず、主要国の中で唯一、若年層の就業率が低下している(図1、2)。

図1 主要国の若年層の就業率の変化
図2 主要国の実質GDP成長率

この背景には、非労働力人口に相当する経済不活発者数の増加、企業の雇用意欲低下がある。英国では、感染症拡大以降、長期疾患107や学生であること等を理由とした経済不活発者数が増加傾向にあり、経済不活発者数全体に占める若年層の割合も足下で高止まりしている(図3)。

図3 英国の経済不活発者数の推移

経済不活発者から就学等の教育要因を除いたいわゆるニート108の割合についても、2021年以降上昇傾向となっており(図4)、英国政府も若年層のニートの割合上昇を社会課題として認識し、2025年11月、その背景に関する調査を実施することを公表109した。

図4 英国の若年層におけるニートの割合

続いて、労働需要の動向を確認すると、2024年4月に実施された大幅な最低賃金引上げ(図5)や国民保険料の企業負担増加110に伴う企業の雇用コスト増加により、雇用を抑制する動きがみられており、英国の求人率は低下傾向にある(第2-3-39図)。イングランド銀行(以下「BOE」という。)等による企業調査によると、国民保険料の企業負担増加への対応として「従業員削減」と回答した企業は40%を超えている(図6)。

図5 英国の最低賃金引上げ率
図6 国民保険料の企業負担増加に対する企業の対応

こうした企業の雇用意欲低下により、実務経験やスキルの乏しい若者の就業機会は一層低下していると考えられる。感染症拡大以降一時低下していた若年層の失業率は、2022年以降再び上昇傾向となり、足下では高止まりしている。さらに、若年層の失業者のうち12か月以上失業状態の長期失業者の割合も増加傾向となっている(図7)。

図7 英国の若年層の失業率

若年層の非労働力割合の増加については、現在のユニバーサル・クレジット(Universal Credit)(以下「UC」という。)111による給付制度が一因になっているとの指摘もある。UCは、非就労者や低所得者を対象とした給付金に加え、病気を理由に就労困難であることが認められた場合には追加給付が行われる。追加給付の申請者は「就労可能」または「就労不能」の2つに分類され、就労不能(追加給付受給者)と評価された者については、その後の就労支援は積極的に行われないことになる。また、英国政府の報告書では、就労意欲と支援ニーズがうまくかみ合っていないなど追加給付受給者に就労を促すインセンティブに課題があること112、就労可能となり得る者に対する必要な支援がされにくい制度設計になっていること等が指摘されている。

若年層の非労働力化への対策として、2024年11月公表の労働白書(Get Britain Working)では、若年層に給付金ではなく就労機会を提供する就労保証制度や、育成・技能訓練支援制度113を含めた雇用支援制度改革の方針が示され、2025年秋季予算において具体的な内容が公表された(表8)。リーヴス財務大臣の発言によれば、支援対象のUC受給者が正当な理由なく就労を拒否した場合は、給付を停止または減額114する方針だという。

表8 英国の若年層への就労支援制度

OECD115は、若者の失業は実務経験やスキルを習得する機会が減少することで、その後の就業が更に困難となる悪循環を生む可能性があることに加え、長期的な失業は精神的な健康問題を引き起こし、就労意欲を更に低下させる可能性があると指摘している。若年層の雇用の停滞が続く場合には、人的資本の低下を通じて将来的に英国経済の成長にマイナスの影響が及ぶ可能性もある。英国の経済及び社会にとって重要な課題である。

(消費者物価上昇率はインフレ目標を上回る状態が続く)

英国の消費者物価上昇率(総合、前年比)は、ロシアのウクライナ侵略を受けたエネルギー及び食料価格高騰で2022年前半から半ばにかけて輸入物価の上昇が加速したことを主因に、2022年10月には前年比11%を記録した(第2-3-41図、第2-3-42図)。その後、政策金利引上げに伴う通貨高に加え(第2-3-43図)、エネルギー及び食料価格の下落並びに国際物流コストの低下(第2-3-44図)により輸入物価の上昇も鈍化、消費者物価上昇率は2024年9月には前年比1.7%にまで下落した。その後、エネルギー価格のマイナス寄与はく落やその他財価格のプラス寄与増大に加え、賃金上昇や2025年4月に施行された国民保険料法改正に伴う雇用者負担増分のサービス価格転嫁といった価格設定行動の変化もあいまって消費者物価は再び上昇し、2025年9月には前年比3.8%を記録した。もっとも、足下では2025年10月のエネルギー価格上限改定が前年10月に比べて小幅な引き上げにとどまり、プラス寄与が限定的であったことも影響して、消費者物価上昇率は10月同3.6%、11月同3.2%と再び鈍化がみられる(第2-3-41図)。

BOEは12月の金融政策委員会声明で、2026年4-6月期にはインフレ目標の2%近くまで低下するとの見通しを示している。

第2-3-41図 英国の消費者物価上昇率(総合)
第2-3-42図 英国の輸入物価
第2-3-43図 英国の名目実効為替レート
第2-3-44図 国際物流コスト(バルチック指数)

BOEは政策金利を引下げ)

BOEは、2021年末以降、消費者物価上昇率の加速を受けて政策金利の引上げを継続してきたが、2023年秋以降は政策金利を据え置いてきた。政策金利引上げの効果もあって消費者物価上昇率は2022年末以降低下傾向となり、2024年5月以降は2%台で推移してきたことを受け(第2-3-41図)、BOEは2024年7月の金融政策委員会で政策金利であるバンク・レートを5.25%から0.25%ポイント引き下げ、5.00%とすることを決定した。以降、同年11月、2025年2月、5月、8月、12月と0.25%ポイントの引下げを段階的に行い、現在の政策金利は3.75%となっている(第2-3-45図)。

第2-3-45図 BOEの政策金利の推移

また、BOEは、金融政策目的で保有する英国債の削減を進めている。これは量的引き締めの一環で、2022年2月に満期を迎えた国債の再投資を中止して以来、現在に至るまで継続している(第2-3-46図)。2024年10月から2025年9月の1年間で保有残高を1,000億ポンド削減して5,580億ポンドとする計画を実行した後、直近では2025年9月の金融政策委員会において、2026年9月までに金融政策目的で保有する国債を700億ポンド116削減し、4,880億ポンドとする計画を公表している。

今後の金融政策については、2025年12月の金融政策委員会において、インフレ見通しの推移に応じて更なる緩和余地を判断する方針を確認するとともに、直近の経済状況に基づけば、緩やかな利下げ路線を継続する可能性が高いとの認識を示した。なお、金利水準については、現在も景気抑制的である117との認識を示唆している。

第2-3-46図 BOEの国債保有残高推移(バランスシート)

3.欧州の財政政策の動向

(欧州の財政状況は悪化傾向)

以下では欧州の財政状況について確認する。

ドイツでは、2008年の世界金融危機に対応するための歳出拡大と財政悪化を踏まえ、債務ブレーキを設けることで連邦政府の構造的財政赤字を名目GDP比0.35%以内に抑えるなど、健全性を重視する財政運営を行ってきた(第2-3-47図)。しかし、2025年3月に、脱炭素化を始めとするインフラ投資を目的とする特別基金の創設(前述の第2-3-12図参照)と防衛費の増額を含めた債務ブレーキの見直しを行い、財政政策の方針を転換した。これに伴う政府投資の加速や防衛関連支出の増加により、欧州委員会の見通しでは2026年の一般政府財政赤字対GDP比は▲4.0%まで拡大し、2027年の公的債務残高は対GDP比67.0%まで増加すると予測されている(第2-3-48図)。

一方、フランスでは財政健全化が課題となっている。フランスの2024年の財政赤字は対GDP比▲5.8%と、EUの財政基準118である一般政府財政赤字対GDP比▲3%を超過しており、ユーロ圏の中でも最大の財政赤字国となっている(第2-3-47図)。さらに、公的債務残高についても、2024年末で対GDP比113.2%と高止まりしている。こうした状況を受け、バイル内閣は財政再建のため、財政収支を約440億ユーロ改善する2026年予算案を公表し、その是非を問う内閣信任投票を2025年9月8日に行った。その結果、内閣信任投票が否決されたことから、バイル内閣は総辞職し、同年9月10日にルコルニュ氏が首相に就任した。現在、フランスの国民議会119は少数与党となっていることから、緊縮的な予算案に反対する野党の協力を得て政策を進める必要があり、不安定な政局が続いている。財政健全化に向けた動きが停滞する中、フランスの長期金利は、2025年秋頃からイタリアと同水準となり、フランスの財政赤字抑制と債務管理への対応は引き続き注視する必要がある(第2-3-49図)。

イタリアの政府債務残高は、2024年対GDP比134.9%と、ユーロ圏においてギリシャに次ぐ高水準にある。こうした中、イタリアはEUの過剰財政赤字是正手続(Excessive Deficit Procedure120の対象からの脱却を目指し、財政赤字の削減に取り組んでいる。一般政府財政赤字対GDP比は、2024年の▲3.4%から2027年には▲2.6%まで縮小する見通しであり、EUの財政基準を満たすことが見込まれている。一方で、公的債務残高は2027年にはGDP比137.2%に達する見通しであり、財政の持続可能性については、引き続き注視する必要がある。スペインは、2024年12月に成立した税制措置121や堅調なGDP成長率を背景に、2027年の財政赤字は対GDP比▲2.1%まで縮小する見通しである。公的債務残高の対GDP比は、2024年の101.6%から2027年には97.1%まで低下すると予測されている。

第2-3-47図 欧州主要国の一般政府財政赤字(対GDP比)(2024年)
第2-3-48図 欧州主要国の財政状況
第2-3-49図 欧州主要国の長期金利

英国では、経済成長と財政健全化の両立が課題となる中、2025年11月に公表された2025年秋季予算122において、税制と歳出の見直しを通じた将来の歳入拡大と債務削減の道筋が示された。具体的には、所得税率区分の据置き123EV等への走行距離課税124導入といった増税策と、行政改革125や福祉改革126を通じた歳出削減により、公的部門財政収支127(対GDP比)の赤字が2025年度の▲4.5%から2030年度に▲1.9%まで縮小するほか、2029年度における公的部門経常的収支128が217億ポンドの黒字に拡大する見通しが公表された(第2-3-50図、第2-3-51図)。

なお、スターマー政権が設定した財政健全化目標は、(1)2029年度予算での経常的収支黒字化達成と、(2)公的部門純金融負債の対GDP比を2029年度までに減少させることの2点であり、2025年秋季予算と同日に公表された予算責任局(OBR)の経済財政見通しでは、今後想定されるリスク要因や経済ショック等の不確実性も加味した(1)の達成確率を59%(2025年3月見通し時点:54%)、(2)の達成確率を52%(同51%)と評価している。2025年春季予算において、スターマー政権は社会保障給付等の見直しによる歳出削減を計画していたが、党内の反対により撤回に追い込まれたことで、市場では英国の財政健全化の取組に先行き不透明感が高まっていた。これにより、一時は長期金利の上昇が進んでいたが、2025年秋季予算で英国政府が財政ルールを遵守する姿勢が市場に示されたことで、足下では長期金利は小幅に低下している(第2-3-49図)。ただし、利払費の高止まりによる政府債務の増加は今後も続くと想定されることから、英国の財政状況と長期金利の関係には引き続き注視が必要である(第2-3-52図)。

第2-3-50図 英国の公的部門財政収支(対GDP比)
第2-3-51図 英国の公的部門経常的収支見通し(2029年度)
第2-3-52図 英国の財政状況

(まとめ:欧州の景気は緩やかに持ち直していくことが期待される)

これまでみてきたように、2025年後半のユーロ圏及び英国経済は、米国の関税措置の影響を受けつつも、ユーロ圏、英国ともに2025年7-9月期の実質GDP成長率はプラスとなり、景気は総じて持ち直している。

ユーロ圏では、個人消費に持ち直しの動きがみられる中、設備投資が成長を下支えした。特に、加盟国に向けた補助金・融資制度であるRRFによる資金供給を背景に、イタリア・スペインで設備投資が顕著に増勢を示している。またドイツでは、インフラ投資を目的とする特別基金の創設と債務ブレーキの見直しを行い、拡張的な財政政策を行っている。ただし、高水準の公的債務を抱える国では財政健全化の圧力が強まりつつあり、追加的な景気刺激策は限定的となっている。

ユーロ圏と比べると、英国では、物価上昇率の鈍化と実質賃金の改善を受け、内需は回復基調を維持するものの、失業率の上昇や消費者信頼感の悪化が景気の重石となっている。また、輸出に弱さがみられるなどの違いもみられる。財政政策は緊縮的な方向にシフトしつつある。

先行きについては、ユーロ圏では、緩やかに持ち直していくことが期待される。個人消費に伸び悩みがみられるものの、政府消費や設備投資が成長を下支えしている。今後は、個人所得の動向とともに、消費者マインドの改善や貯蓄志向の弱まり等、個人消費を上向かせる状況がつくれるかがカギとなる。また、財政状況が悪化していく国が多くなっており、各国の財政政策の動向が各国の内需に与える影響にも注意が必要である。

英国では、持ち直しが続くことが期待される一方で、依然として景気抑制的とみられる金利水準であることから、その影響による景気や雇用の下振れリスクには注意する必要がある。

ユーロ圏、英国ともに、米国の政策動向やそれに伴う不確実性と世界経済の変動、また、長期金利の動向を含めた財政状況をめぐる動向を注視していく必要がある。


59 アイルランドは、低い法人税率を背景に多国籍企業が集積しており、多国籍企業特有の本社拠点間の取引等が輸出入や総固定資本形成の増減としてGDPに計上されることから、GDP成長率の変動が大きくなりやすい。
60 欧州委員会は、2025年7-9月期のフランスの経済成長は大型輸送機器の輸出の寄与が大きく、スペインの経済成長は内需(民間消費、投資)の寄与が大きいとしている(European Commission (2025a))。また、IMFは近年のスペインの経済成長について、感染症拡大収束後の観光産業の回復及び非観光サービスの成長による堅調なサービス輸出、移民による労働力の増加によって支えられていると指摘している(IMF (2025b))。
61 ただし、2024年1月から、OECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」において合意されたグローバル・ミニマム課税に基づき、売上高7億5千万ユーロ以上の企業を対象に、法人税率は15%に引き上げられた。
62 Krugman (2016)は、アイルランドのGDPが多国籍企業の資産移転により2015年1-3月期に急増したことを「レプラコーン・エコノミクス」(アイルランドの妖精であるレプラコーンによる魔法のような経済)と呼んだ。
63 この他、航空機リース産業による航空機の購入も、アイルランドに所有者が所在するためアイルランドの総固定資本形成に計上されるが、雇用や国内経済活動への直接的な影響は限定的である。
64 例えば、多国籍企業が海外法人からアイルランド法人に知的財産権を移転した場合には、その取引額がアイルランドの総固定資本形成にプラスで計上される。逆に、多国籍企業がアイルランド法人から海外法人に知的財産権を移転した場合には、その取引額がアイルランドの総固定資本形成にマイナスで計上される。
65 2024年の財輸出1,344億ユーロのうち、医薬品は562億ユーロ。
66 製薬メーカーが設定する公表価格(リスト価格)で、リベートや割戻し、ディスカウント等の調整を行う前の価格。
67 Fitzgerald (2025)、Mulcahy et al. (2024)
68 修正GNIGNI*)はグローバル化の影響を排除する目的でアイルランド中央統計局が作成。GNIから、知的財産と航空機リースの固定資本減耗、本社登記を海外からアイルランドへ移した公開有限責任会社による純要素所得(本社が海外子会社から受け取った利益から株主に支払った配当を除いたもの)を除外したもの。
69 Government Finances (2018)、OECD (2025c)
70 European Commission (2025a)
71 EU加盟国は欧州委員会と合意した計画に基づき、投資を行う。対象は「グリーン移行(環境対策)」、「デジタルトランスフォーメーション」、「スマートで持続的かつ包括的な成長」、「社会的領土的結束」、「健康、経済、社会の制度的改革」、「教育や技能開発等次世代の能力開発」の6つ。各国の計画は、割当額の少なくとも37%をグリーン移行に、20%をデジタルトランスフォーメーションに割り当てる。投資の実施期限は2026年8月31日、欧州委員会からの資金支払期限は2026年12月31日に設定されている。2021年時点で予定されていた総額は7,238億ユーロ(うち融資額は3,858億ユーロ)(European Commission (2025b))。
72 ドイツでは公的投資が2023年時点で名目GDP比2.8%とEU全体と比較して低いことから、ドイツ経済にとって必要な公的投資が行われてこなかったのではないかといった批判があり、特に、交通インフラ分野では、老朽化に起因する大型貨物車両の橋梁通行禁止が増加するなど、設備の老朽化が社会問題となっている(横山(2025))。
73 2025年2月に米国がウクライナへの軍事支援を一時停止するなど、EU域内の防衛力を抜本的に強化する必要性が高まったことから、欧州委員会は2025年3月に新たな防衛計画(ReArm Europe Plan / Readiness 2030)を公表した。
74 インフラと気候中立のための特別基金。12年間(2025年から2036年)で最大5,000億ユーロの借入が認められている。このうち、州及び地方自治体向けに1,000億ユーロ、気候・変革基金に1,000億ユーロが充当される。
75 構造的財政収支対GDP比▲0.35%の基準までしか公債を発行できないとするドイツの財政ルール。
76 ドイツでは2025年予算案をめぐり、経済対策と財政規律のどちらを重視するか折り合いがつかずに2024年11月に連立与党の枠組みが崩壊し、2025年は暫定予算が執行されていたが、2025年9月18日にドイツ連邦議会が2025年予算を可決、連邦参議院が同年9月26日に承認した。2025年連邦予算では1,156億ユーロ(名目GDP比3.3%、約19兆円)の公的投資を予定している。また、基本法の改正により、これまで債務が許容されていなかった各州予算においても構造的財政赤字対名目GDP比0.35%までの債務を可能とした。
77 「ドイツの経済拠点強化のための税制投資即時プログラム」法。2025年7月19日から施行されており、2025年7月1日から2027年12月31日までに取得した動産に対する定率法での年間最大30%の減価償却や、法人税率(現行15%)の段階的な引下げ(2028年から2032年までの5年間毎年1%)等により企業の投資促進を図るもの。
78 EUの自動車産業の競争力低下の要因について、欧州委員会は、CO2排出規制に対応したEVを急速に市場へ浸透させる動きにサプライチェーン転換が遅れたことや、EUにおける高いエネルギーコストを背景にしたコスト面での不利等を挙げている(European Commission (2024a))。
79 ECBのインフレ目標は中期的に2%。
80 中国の「過剰供給」問題については、内閣府(2025)を参照。
81 ECBは、2024年9月12日の金融政策決定会合の声明で預金ファシリティ金利を金融政策運営の中心的金利としている。
82 日本銀行(2020a)
83 ECB (2025)
84 米国では、2025年7月にステーブルコイン(民間の発行体によって発行され、法定通貨と等価値の維持を目指す暗号資産の一種)の包括的な規制の枠組みの確立を目指す法律が成立した。同月、大統領デジタル資産市場作業部会が公表した米国のデジタル資産及びブロックチェーン技術に関する方針を示した報告書では、CBDC導入への否定的な立場を明確にし、民間によるステーブルコイン開発を優先することで、EUや中国と差別化し、市場主導のイノベーションを推進することとしている(宮川(2025)、White House (2025))。
85 本コラムにおける「EV」はBEVPHEVFCVを指す。
86 内燃機関車:ガソリン車、ディーゼル車。
87 「Fit for 55」(温室効果ガス排出量を2030年までに1990年比で少なくとも55%削減する)政策パッケージ(2021年7月)
88 ドイツ:2025年6月30日から2028年1月1日までに購入されたBEVFCVが対象となる、企業向けEV購入の新税制優遇措置(初年度に減価償却率の上乗せ)を導入。フランス:BEVに対し最大4,000ユーロの補助金。欧州製バッテリー搭載で追加1,200~2,000ユーロ。2026年まで延長。
89 EVの生産には、EVバッテリーにリチウム、コバルト、ニッケル、黒鉛、銅、駆動モーターにレアアース(ネオジム、ジスプロシウム)等が必要である。
90 IEA (2025a)によると2023年には、リチウムは採掘量の約85%がオーストラリア、チリ、中国であり、精製量の約65%は中国、約25%がチリである。ニッケルは採掘量の半分以上をインドネシアが占め、精製量の60%が中国とインドネシアである。コバルトは、採掘量の66%がコンゴ民主共和国であるが、精製量の75%は中国である。リチウム電池等に使用される重要鉱物である黒鉛は、採掘量の80%が中国であり、精製量の90%以上が中国である。
91 IEA (2025a)
92 European Commission (2024b)によると中国のBEVバリューチェーンは不公平な政府補助金を受けており、EUBEV生産者に経済的損害の脅威をもたらしているため、BYDSAICグループ等特定の企業に対し、2024年10月31日から5年間相殺関税を課すこととしている。
93 2023年9月に制定。制定当初は域外企業の工場誘致を重視してきたが、近年は域内企業の研究開発支援へ政策転換を進めている。2025年には同法の改正を通じて、研究開発・設計分野への直接支援を拡充し、2030年までに世界シェアを倍増させる目標を掲げている。
94 2024年5月に制定。気候・デジタル・防衛産業向けの重要原材料(リチウム、ニッケル、レアアース等)のサプライチェーンの強靭性を確保するため、2030年までに重要鉱物の年間消費量の少なくとも40%を域内で加工し、10%を採掘する目標を掲げた。
95 VWは、10月下旬に主力工場で「Golf」や「Tiguan」等の生産ライン停止を計画。ネクスペリアによる影響ではないと表明しているものの、今後も生産に支障を来す可能性が懸念されている。EV生産拠点では短時間労働(Kurzarbeit)の導入も検討されている。
96 VW:2024年10月ドイツ国内3拠点の閉鎖と数千人規模の雇用削減を検討。同年12月労働組合との合意により、2030年までにドイツ国内で最大35,000人の雇用削減を実施。アウディ:2025年3月ドイツ国内にて最大7,500人の雇用削減。Schaeffler(自動車等機械部品メーカー):ドイツ国内で正規・派遣含めて2,800人規模の雇用削減。
97 GDPの需要項目別構成比を2024年の名目値でみると、個人消費62.2%、政府消費20.9%、総固定資本形成17.4%、財輸出12.8%、サービス輸出16.6%。
98 2025年1-3月期前期比年率2.7%、4-6月期同0.9%、7-9月期同0.4%。
99 本制度では、価格が37,000ポンド以下の新車EV購入者に対して最大3,750ポンドの補助金が支給される。対象車種は、環境基準を満たしかつ価格上限を設けることで、低価格帯の普及促進を重視している。加えて、国民保健サービス(NHS)の医療車両電動化や充電インフラの整備を政策の柱とする投資パッケージもあわせて公表されており、持続可能な交通政策の一環として注目されている。
100 2026年1月現在、3.75%
101 英国は2035年に温室効果ガス排出量を1990年比で78%削減することを目標とする中、2023年3月、「Powering up Britain」計画を発表し、炭素排出のネットゼロと英国の国際競争力の強化を図ることとしていた。
102 ロシアのウクライナ侵略による金価格上昇を受けて、2022年7-9月期から同10-12月期にかけて大きく増加。
103 英国の2025年7-9月期の実質財輸出(金除く)は前期比▲0.8%。
104 英国の2025年7-9月期の実質サービス輸出は前期比1.1%。
105 中国向けの財輸出が大きく変動している時期(2019年後半、2022年後半)は、金輸出の増加と考えられる。
106 下平(2024)は、サービス輸出の名目GDPに占める割合は財輸出よりも高く、法律、会計、広告等専門コンサルティングサービス等のビジネスサービスがけん引していると指摘している。
107 英国政府は、経済不活発者の長期疾患の例として、精神疾患、筋骨格系疾患、心血管疾患を挙げている(HM Government (2024))。
108 就業、就学、職業訓練いずれにも属していない若者。
109 2025年11月10日、元保健社会福祉大臣アラン・ミルバーン氏のもと、若者の非活動率増加の背景に関する調査が実施されることが公表された。中間結果は2026年春に政府へ共有され、2026年夏に最終報告書が公表される予定とされている。
110 2024年秋季予算において公表。2025年4月から開始。
111 18歳以上の就労していない、あるいは低所得で就労している人に対し、給付金が支払われる制度(病気がある場合や養育責任がある場合等は16歳から請求可能)。
112 「社会福祉サービス利用者における就労意欲と支援ニーズに関する中間報告書」では、調査対象者の60%が「就労支援サービスから自分に適さない仕事を探すことを求められることを懸念」、50%は「就労を試みて失敗した場合に給付金が支給されなくなることを懸念」していると報告されている(Department for work & pensions (2024))。
113 年間の給与支払いが300万ポンドを超える大企業は総給与額の0.5%の税金を支払い、中小企業を含む企業の技能訓練費用に充てられている。従来の制度での技能訓練は、就業しながら国が定めた職業標準(Apprenticeship standard)に沿って学び職業資格を得るものである。新たな制度(Growth and Skills Levy)では、従来の技能・職業訓練に加えて、AI、デジタル、エンジニアリング等の急速に需要が高まる分野の短期間の研修も対象となる。
114 現在もUC受給者は、就労コーチとの面談、履歴書の作成、就職活動等をしなかった場合、給付が停止または減額される。就労保証制度の対象の若年層は給付が停止される条件が増え、より就労が促進されることが期待される。
115 OECD (2025a)
116 2024年10月~2025年9月の国債削減額は1,000億ポンドで、うち870億ポンドは満期を迎える国債への再投資の中止、130億ポンドが売却によるものであった。一方、2025年10月~2026年9月は削減額700億ポンドのうち、210億ポンドを売却でまかなう方針が示されており、国債削減に占める売却の割合は13%から30%に上がっている。
117 BOEの市場参加者へのアンケート調査(2025年11月公表)における中立金利(拡張的でも緊縮的でもない金利)の中央値は3.00%である。
118 EUでは、EU全体の経済と財政の安定性を保つため、①一般政府財政赤字対GDP比3%以内、②公的債務残高対GDP比60%以内とする基準(マーストリヒト基準)を設けている。
119 フランス議会の下院。政府の法案は上下院で意見不一致の場合、最終議決を国民議会に行わせることができる。また、予算案は国民議会に先議権がある。
120 EUの財政基準を大きく逸脱する加盟国に対して、是正措置として適用されるもの。対象となった加盟国に対する監視を強化し、赤字是正のための効果的な措置を講じるよう勧告することで是正を促す。2024年7月にイタリアを含めた7か国が対象となっている。
121 多国籍企業及び大規模国内企業を対象とした法人所得税の増税、電子たばこを含むたばこ関連製品への追加課税、金融機関に対する新税率の適用等。
122 英国の予算案は、年に2回財務大臣が下院で公表する。同日に予算責任局から経済財政見通しが公表される(UK Parliament (2025b))。
123 賃金上昇により、現在より高い税率区分が適用される納税者の増加が想定されるため、事実上の増税策とされる。
124 エンジン車減少により税収の大幅な減少が見込まれる中、道路の舗装や充電設備等公共インフラを維持するため、2028年4月からEVの走行距離1マイル当たり3ペンス(約6円)を徴収する。利用者は毎年1回の車検時に走行距離を記録し、納税する。燃料税もかかるPHEVの税額はEVの半分とする。
125 地方議員約5,000人の削減や、公務員制度改革の一環としてバックオフィス業務コストの16%削減、難民保護制度の効率化等に言及している(HM Treasury(英国財務省)(2025))。
126 UCの支給額見直し(新規申請者への医療費補助削減を含む)や就労促進により、2030年度に28億ポンド(約5,600億円)の歳出削減が見込まれる(HM Treasury(英国財務省)(2025))。
127 公的部門経常的収入(主に税収)から公的部門総支出(公的部門経常的支出+公的部門純投資支出+固定資本減耗)を引いたもの。
128 公的部門経常的収入から公的部門経常的支出+固定資本減耗を引いたもの。

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