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第4節 まとめ

本章では、中国の成長力の変化と世界経済という観点から、長期的な成長力、現下の経済安定化、今後の世界との連関についてそれぞれ展望を試みた。

第1節では、各国の経験も踏まえ、成長力低下のプロセスを乗り越えるため、投資主導型の成長からの転換として技術進歩の重要性を高める道を検討した。高い投資率を単に低下させればよいのではなく、製造業を核としつつ、産業の高度化が消費拡大とつながる形で好循環を続けていくことが課題といえよう。

第2節では、住宅市場等の過熱がみられる中で、中国が経済の減速に対応し、ソフトランディングにいたる道を展望した。現下の減速への対応力は高い一方、資産面の過熱懸念への構造的な対応を探ることが、中国経済のソフトランディングを進める上での課題となろう。

第3節では、中国が「中所得国の罠」に陥らなかったとしても、今後10年間の成長率は6%台半ば程度で推移する姿を示した。また、中国が安定成長に移行した場合、貿易等の連関を通じて、世界にどのような影響を与えるのかを検討した。世界にとって、中国との相互依存関係は高まっており、競合関係だけでなく補完関係も高まることが展望された。

各節はそれぞれ独立しているものの、内容は相互に関連しあう面も多い。

投資主導型の成長から脱却し、投資の効率化を図っていくためには、金融部門の機能向上が重要である。同時に、金融部門の役割の再整理は、短期的な減速対応の上でも課題である。これらは、中所得国の罠という観点からも、政策余力を維持する観点からも、早めに取組を進めることが望ましい。

また、目下の課題である短期的な減速懸念と金融の過熱懸念に適切に対処し、また長期的な安定成長への移行に向けての活力を最大限発揮させる上では、経済・社会制度の整備を進めることが重要である。これは、各国の経験から得られる教訓である。

中国経済の動向は我が国を始め、先進国・新興国の今後の成長にも大きな影響を与える。中国が輸出の高度化等を通じて安定的な成長を続けるとともに、魅力のある投資先であり消費市場であることで、世界各国との相互利益の推進ができるかが、中国と世界各国にとっての課題であり目標であるといえよう。

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