31 金融発展の市場化についての先行研究をみると、金融システムの市場化を肯定的にとらえるものと、当初のシステムにも一定の合理性を認める見方の双方がある。もともと、金利規制等により、預金者の実質的な負担の上に銀行部門に利得が移転されているという「金融抑圧(repression)」に対しては自由化の必要性が指摘され、それが70年代の理論的支柱となった。これに対して、金利規制等により銀行に積極的に独占利潤・規制利潤を確保させ、規模の経済、範囲の経済(ネットワークの完成)等を整備し、その上で競争に移行するという観点から、「金融抑制(restrain)」として肯定的に位置付ける見方が対抗していた。