序
世界金融危機後の世界経済は、先進国と新興国で回復のスピードが二分化するなかで回復を続けてきたが、総じて鈍化の兆しをみせはじめている。
欧州では、世界金融危機後、景気回復のための財政支出を余儀なくされ、財政収支が悪化した。さらに、まだ景気回復が本格化しないまま、累積債務が増大している一部の国で財政危機が発生し、金融資本市場の不安要因になっている。
アメリカでも、世界金融危機後の回復スピードがこのところ極めて弱いものとなっており、世界経済全体の回復にも影響している。
一方、世界金融危機後の世界経済をけん引してきた新興国の景気にも陰りがみえはじめている。内需を中心に高い成長を続ける中国やインドでは、物価上昇や金融引締めの継続等から、成長のバランスに問題が顕在化しつつある。その他アジア地域でも、主に欧米の景気低迷による外需の低下を背景に、回復のスピードが緩やかになっている。
今般の「世界経済の潮流」では、世界金融危機後、回復を続けてきた世界経済が鈍化し始めた背景や要因、政策的課題等について、主に金融資本市場をめぐる緊張の高まり、高成長を続ける新興国においても深まる成長のひずみ等を中心に分析するとともに、今後の見通しについても考察することを目的とする。