世界経済は、09年春から半ばを底に回復局面入りし、緩やかに回復している。地域により回復ペースには差があるものの、10年春先までは、(1)各国の財政刺激策の効果、(2)急速な在庫積上げの動きによる生産活動の活発化等を背景として、それぞれ回復ペースを強めていた。しかしながら、10年5月にギリシャ財政危機がピークに達し、ヨーロッパを中心に、金融資本市場に大きな動揺をもたらした。その後市場は安定化に向かったものの、欧米を中心にマインドに影響を与えることとなった。
欧米では、世界金融危機発生後の信用収縮で回復基調が弱い中、在庫積上げの動きの一巡や財政刺激策の効果のはく落に加え、こうしたマインドの弱さの影響もあいまって、10年春から夏にかけて、景気の回復のペースは緩やかになっている。実質経済成長率をみると、アメリカでは、09年7~9月期以降プラスで推移しているが、09年10~12月をピークに伸びは低下傾向にあり、前期比年率で10年4~6月期1.7%、7~9月期は2.5%となっている(第1-1-1図)。回復のペースは、高水準の失業率や信用収縮の継続の影響もあって、過去の回復局面と比べると緩やかなものとなっている。ヨーロッパでは、実質経済成長率は10年4~6月期まで高まったものの、7~9月期には低下した。また、国によりばらつきも大きく、今後もヨーロッパ全体の景気の持ち直しのテンポは緩やかなものとなる見込みである。なお、10年7~9月期の実質GDP額の水準を世界金融危機発生前の08年7~9月期と比較してみると、アメリカでは初めて危機前の水準をわずかに超えたが、ユーロ圏や英国では、依然として危機前の水準を下回っている。
また、アジアでも、10年半ば以降、中国では景気拡大のテンポはやや緩やかになっており、これに伴い、主に中国向けの輸出にけん引されて景気回復を強めてきた韓国・台湾・ASEAN地域についても回復テンポはやや鈍化している。