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第2章 緊急避難的な経済政策からの出口戦略

第5節 出口の先の金融政策・金融システム安定化策の枠組み

2.マクロ・プルーデンス政策を実施するための枠組み作り

   アメリカでは、09年6月に金融規制改革法案の概要(1) が発表された。同案では、金融規制のすき間を埋めるとともに、新たなシステミック・リスクを特定し、関係各機関の協調体制の改善を図る金融サービス監督協議会(Financial Services Oversight Council)を創設することが示された(第2-5-1図)。同協議会は、財務長官を議長とし、連邦準備制度理事会(FRB)議長や証券取引委員会(SEC)委員長、商品先物取引委員会(CFTC)委員長、連邦預金保険公社(FDIC)総裁、連邦住宅金融局(FHFA)局長等を構成メンバーとしている。協議会はこれまでの大統領金融市場作業部会に代わる位置付けのもとで、システミック・リスク対応と金融規制の協調体制に関する権限と責任を追加的に持つ組織とされている。金融サービス監督協議会に関しては、09年7月に法案が議会に提出され、09年10月に下院金融サービス委員会が作成した金融安定改善法案に同協議会の設置が盛り込まれた。
   EUでは、09年2月のド・ラロジエール報告に基づき、新たな金融規制・監督体制の枠組み作りが進められている。マクロ・プルーデンスについては、欧州システミック・リスク理事会(ESRB:European Systemic Risk Board)を設置し、マクロ的な観点から横断的な金融監督を行うとされている。ESRBには法的拘束力を伴う権限は与えられないが、加盟国及び各国の監督当局はESRBの勧告や警告に従わない場合には、説明責任が課される(act or explain mechanism)。
   英国では、イングランド銀行が金融政策を、FSAが個別金融機関の監督を担当していたが、金融システム全体を監視する組織が存在しなかったというこれまでの体制への反省を踏まえ、09年3月のターナー・レビュー(財務大臣の諮問に対するターナーFSA会長による答申)の提言を受けて、09年7月、財務省が金融市場の改革プランを発表した。同プランでは、マクロ・プルーデンスについて、既存のBOE、FSA、財務省の三者による常設委員会(2) (Standing Committee)を改組・強化し、金融安定協議会(Council for Financial Stability)を設立することとされ、11月には同プランを踏まえた金融サービス法案が議会に提出された。また、09年2月、金融危機を受けてBOEの役割を強化することなどを目的とした法改正が行われたが、その中で、BOEの金融政策における目的として、従来の「物価安定と通貨の信認」に加えて、「金融システムの安定」が新たに追加された。


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