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第2章 緊急避難的な経済政策からの出口戦略

第2節 財政政策の出口戦略

1.金融危機対応に伴い拡大する財政収支赤字・債務残高

(1)アメリカの金融危機対応と財政状況

   アメリカでは、景気後退による税収の落ち込みや積極的な財政出動による歳出拡大及び減税を背景に、連邦政府の財政赤字は急速に拡大している。09年度の累積赤字額は1兆4,171億ドル(GDP比10.0%)となり、過去最大の赤字であった08年度(4,548億ドル)の約3倍となっている(第2-2-1図)。アメリカ行政管理予算局(OMB)の見通しによれば、10年度以降も財政赤字は過去に比べて高い水準で推移する見込みである。歳入動向をみると、2000年代半ばには景気の拡大を背景に法人所得税を中心に大きく税収が伸びたが、今回の景気後退を受けて09年度は大きく減少している(第2-2-2図)。金融危機以前の水準に戻るのは11年度以降になると見込まれている。他方、歳出の動向をみると、01年のアメリカ同時多発テロ事件を契機に軍事費の拡張が続き、医療費も保険の適用範囲拡大や薬価の高騰、高齢化の進展等を背景に大幅に拡大している。加えて、今回の景気後退を受けて、関連する歳出も増加したことから、09年度の歳出規模はGDP比28.1%と大幅な拡大が見込まれている(第2-2-3図)。利払い費については、2002年以降、歳出の約10%に抑えられてきたが(第2-2-4図)、今後は拡大が続き、12年度以降は名目GDPの伸びを上回ることが見込まれている。
   巨額の財政赤字に加えて、TARP(Troubled Asset Relief Program)のための資金調達やFRBによる信用緩和措置等を支援するための補完的資金調達プログラム(1) (SFP:Supplementary Financing Program)の実施を受けて、連邦政府の民間部門からの借入れは拡大しており、債務残高は急増している。09年度の借入額(フロー)は1兆7,434億ドル、連邦債務残高(ストック)は7兆5,593億ドル(GDP比53.1%)と金融危機前の水準(GDP比約40%)から大きく拡大している。さらに、11年度には債務残高GDP比は70%を超え、第二次世界大戦以来の高水準に達すると見込まれている(第2-2-5図)。また、IMF(2) によれば、14年のアメリカの政府総債務残高(民間保有分に政府勘定保有分(3) も加えた合計)はGDP比で106.7%に達するとしている。

(2)ヨーロッパの金融危機対応と財政状況

   EUでは、08年12月に欧州理事会で採択された「欧州経済回復プラン(EERP:European Economic Recovery Plan)」に基づき、3つの「T」の原則(Timely, Temporary and Targeted)の下、各国で協調して裁量的な財政政策を発動(EU全体で2,000億ユーロ(GDP比1.5%)が目標)してきた(第2-2-6図)
   09〜10年におけるEU全体の財政刺激策の規模は、09年5月時点で、裁量的支出がGDP比約1.8%、ビルト・イン・スタビライザーの効果(同3.2%)を合わせると合計で同5%(約6,000億ユーロ)とされている。
   裁量的支出の規模は各国の財政余力や金融危機による影響の度合いによって異なっており、例えば住宅バブルが崩壊したスペインや、外需の急落の影響を受けたドイツ等ではGDP比3%程度の比較的大規模な支出を行っている。他方、イタリアのように景気刺激策こそ発表しているものの(4) 、実体は既存の予算の組替えであり実際の財政負担はゼロに近いといった国もある。
   こうした結果、欧州各国の財政収支(GDP比)はマイナス幅が大幅に拡大する見込みである。金融市場の混乱以前の06年にはEU、ユーロ圏ともに▲1%台であったが、09年には▲6%台、10年には▲7%程度に至る見込みであり、一般政府債務残高のGDP比についてもEU、ユーロ圏ともに同70〜80%に増加する見込みである。ヨーロッパの主要国において、総じて財政状況が著しく悪化、多くの国で安定成長協定に定める財政収支GDP比▲3.0%、政府債務残高GDP比60%の基準を超過する見通しである(第2-2-7表)


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