第1章 世界経済の回復の持続性 |
第1節 世界経済の回復パターンの特徴
2.政府の景気刺激策に支えられた回復
金融危機後、各国において、金融システム安定化に向けた取組とともに、財政刺激策や金融緩和策が実施されており、現在の景気持ち直しはこうした政策対応によるところが大きい(第1-1-4表、第1-1-5表)。国により財政刺激策の規模は様々であるが、GDP比で、中国では6.3%、アメリカでは4.9%、ドイツでは3.6%など、多くの国で規模の大きな対策が実施されている。対策の内容としては、減税や公共投資による有効需要創出に加え、雇用対策やセーフティネット関連のもの、環境対策等を兼ねた成長力強化関連のものなど、様々な分野にわたっている。中でも、多くの国で実施され、顕著な効果を現しているのは、自動車の購入・買換え支援策である。欧米では、主として、一定の使用年数以上の自動車から新車(国によっては環境対応型自動車)への買換えに対し15〜40万円程度の補助金を与える内容となっており、中国では、小型車購入の際の車両取得税の減税や農民に対する自動車購入補助が実施されている(各国の支援策の詳細については、コラム1-1参照)。
実質経済成長率の内訳をみると、アメリカ、ドイツ等で、公共投資の伸びが成長率を下支えするとともに、09年半ばについては個人消費の伸びが成長率を押し上げている。こうした個人消費の伸びには、国により効果の程度に差はあるものの、自動車購入も相当程度寄与している。主要国の自動車販売台数の動向をみると、対策導入後に増加がみられている(第1-1-6図)。また、生産についても、自動車関連の生産が持ち直しに寄与している(第1-1-7図)。しかしながら、自動車買換え支援策は、既に一部の国(アメリカでは8月、ドイツでは9月)で終了しており、アメリカでは、9月に自動車販売台数が大幅な反動減となるなど、既に政策効果のはく落もみられる。現在の各国の景気の持ち直しの動きは政策効果に支えられている面が大きく、自律的回復力には乏しいことから、先行きについての懸念も否定できない。