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1  アメリカ           United States of America

アメリカ経済のこれまで

<2008年の経済>
  2008年の経済成長率は1%半ば程度と、07年の2.0%から減速する見込みである(民間機関48社平均1.3%(08年12月)、OECD1.4%(08年11月))。四半期別の成長率をみると、1〜3月期は、住宅投資が引き続き大幅に減少するなど、前期比年率0.9%の低成長となった。その後、ドル安等による輸出の増加や民需の鈍化による輸入の伸びの低下で、外需寄与が大幅に押し上げられたことや、緊急経済対策法に基づく家計への戻し減税が個人消費を下支えし、4〜6月期には、前期比年率2.8%と比較的高い伸びとなった。しかし、7〜9月期には、雇用情勢の悪化等により、約17年ぶりに個人消費がマイナスの伸びとなるなど、前期比年率▲0.5%(暫定値)とマイナス成長となっている。また、08年12月には、全米経済研究所(NBER)が、07年12月が景気の山であったと認定したため、08年を通じてアメリカ経済は景気後退局面となっている。
  雇用面では、非農業雇用者数の伸びは07年の前月差平均8.5万人の増加から、同17.3万人の減少(08年1〜11月平均)に転じた。特に、9月の金融危機以後の3か月では、月平均42.5万人と大幅な減少となった。失業率は6.7%(11月時点)と、年初(1月)の4.9%から上昇した。
  物価面では、原油価格が史上最高水準まで上昇する中、消費者物価、生産者物価の上昇率はともに高い水準で推移したが、その後の原油価格の低下等により7月をピークに伸びは鈍化している。エネルギー価格等を除いたコア物価上昇率は、個人消費支出(PCE)コアデフレータが前年比2%を上回る水準で推移しているが、8月以降、やや伸びは鈍化している。

アメリカの主要経済指標

<2009年の経済見通し>
  2009年の経済成長率は、91年以来のマイナス成長となる見込みである(民間機関48社平均▲1.1%(08年12月)、OECD見通し▲0.9%(08年11月))。住宅部門の調整や金融資本市場の混乱が続く中、年前半は、個人消費が減少するなど、マイナス成長が続くとみられる。その後は、金融危機の影響が09年中に収束すると仮定すれば、年の終わりから、緩やかに持ち直すものと見込まれる。しかし、こうした見方には、住宅市場の調整の長期化や、08年9月以降における金融危機の実体経済への影響の長期化、深刻化等の下方リスクがある。

<財政政策の動向>
  2008年10月に公表された08年度(07年10月〜08年9月)の財政収支は、4,364億ドルの赤字(GDP比▲3.1%)となり、単年度の赤字としては過去最大となった。昨年度(▲1,628億ドル)と比較して、2,736億ドルの大幅な赤字幅の増加(前年比約168%)となったが、こうした背景には、景気の悪化に伴う税収の減少や対テロ戦費の増大に加え、2月に成立した個人所得税を還付する戻し減税等を内容とした緊急経済対策法(総額1,680億ドル)等が影響している。今後の財政見通しについて、行政管理予算局(OMB)の年央財政見通し(7月)では、09年度に赤字幅が更に拡大(▲4,820億ドル)するものの、09年度以降は減少に転じ、12年度には黒字に転換すると見込んでいる。しかしながら、08年10月からの09年度については、金融危機への対応に伴う歳出等から、10、11月の2か月間で既に累計赤字額が4,016億ドルに上っており、早くも見通しの赤字額に迫っている。

<金融政策の動向>
  連邦準備制度理事会(FRB)は、08年に入ってからも、07年9月以降と同様の景気の減速に配慮した利下げを続けた。特に1月には、10日間弱で政策金利であるフェデラル・ファンド・レート(FF金利)を合計1.25%ポイント引き下げるという歴史的にも大幅な利下げを実施した。その後、原油価格等の高騰に伴うインフレ懸念の高まりなどを受け、6月以降開催された3回の連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利の据置きを決定したが、10月8日には、金融危機の影響を受けた景気の急速な悪化に伴い、0.50%ポイントの緊急利下げを実施した。以後、FOMCでは利下げ決定が続いている。12月15、16日のFOMCでは、政策金利をそれまでの1.00%から、過去最低となる0%から0.25%に引き下げることを決定し、さらに、連邦準備制度のバランスシートの規模を高水準に保つことなどに政策の重点を置くことを表明した。


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