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14 ドイツ     Federal Republic of Germany

ドイツ経済のこれまで

<2007年の経済>
 2007年の経済成長率は、06年からやや減速し、2%台半ば程度となる見込みである(5大経済研究所見通し2.6%、民間機関24社の平均2.6%(07年10月時点))。民間機関の見通しは半年前(07年4月時点2.1%)に比べ、上方修正されている。
 引き続き企業部門を中心に景気は回復している。内需については、営業余剰の拡大や高水準の設備稼働率を背景に機械設備投資が増加している。06年に、雇用環境の改善や07年1月からの付加価値税率引上げ(16%→19%)前の駆け込み需要により5年ぶりの高い伸びとなった個人消費は、駆け込み需要の反動減により、07年初から弱い動きとなった後、おおむね横ばいとなっている。外需については、輸出は、07年初には伸び悩んだものの、高付加価値の資本財中心に製造業受注が増加しており、04年と07年のEU新規加盟国や産油国を中心に、07年半ば以降増加している。景気回復が続く中で、失業率は徐々に低下している(07年11月8.6%(前年同月の10.1%から1.5%の低下))。消費者物価上昇率(前年同月比)は、付加価値税率引上げの販売価格への転嫁の影響により上昇し、07年3〜8月までは1.8〜1.9%で推移した後、エネルギー価格や食料品価格の上昇を受けて、07年9月以降上昇率をさらに高めている(07年11月速報値3.0%)。

ドイツの主要経済指標

<2008年の経済見通し>
 2008年の経済成長率は、07年を下回る2%台前半程度となる見込みである(5大経済研究所見通し2.2%、民間機関24社の平均2.1%(07年10月時点))。主要4業種を対象とするIFO景況感指数(期待)やエコノミストを対象とするZEW景況感指数は、07年半ばから数か月連続で低下し、06年の最低値水準まで落ち込み、景気減速を示唆している。成長率が鈍化する背景としては、07年末までの時限措置である加速的な減価償却制度等の影響により機械設備投資が伸び悩むことや、ユーロ高による輸出の減速が挙げられる。一方、成長を支える要因としては、賃金上昇が個人消費を下支えすると見込まれること、生産面で関係の深まる04年と07年のEU新規加盟国を中心とした堅調な国外からの製造業受注、08年1月からの失業保険料率引下げ(4.2%→3.9%)によるさらなる雇用環境の改善が挙げられる。また、こうした見方に対する下方リスクとしては、原油価格や商品価格のさらなる上昇、金融資本市場の変動により実体経済へ幅広い影響が及ぶ可能性、アメリカ経済の想定以上の減速が考えられる。

<財政政策の動向>
 2006年の財政赤字は、景気回復による法人税収増、労働市場の改善に伴う歳出削減により、GDP比1.6%へと縮小し、5年ぶりにEUの「安定成長協定」で定めた遵守基準(財政赤字同3%以内)を達成した。これを受け、07年6月に、02年11月に開始された過剰財政赤字手続の解除が決定された。ただし、決定に先立ち、欧州委員会は、税収増を背景にした歳出拡大圧力の高まりが懸念されることなどから、今後も財政健全化努力を継続する必要性を指摘している。
 ドイツ政府は、07年から付加価値税率引上げによる増収分の約3分の2 (約170億ユーロ)は政府部門の財政赤字削減に充てており、財政収支の改善に大きく寄与すると見込まれている。ただし、08年については、実効法人税率引下げ(38.65%→29.83%)による歳入減に加え、企業利益と連動する税の増加の勢いが一服すると見込まれており、欧州委員会の07年秋の見通しでも、07年の財政収支がGDP比0.1%の黒字に対して、08年は同0.1%の赤字と若干の悪化が見込まれている。


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