12 オーストラリア Commonwealth of Australia
<2007年の経済>
2007年の経済成長率は、4%程度となる見込みである(民間機関22社の平均4.0%(07年10月時点) )。民間機関の見通しは、半年前(07年4月時点2.9%)から上方修正されている。07年前半は、国際商品価格の高騰を受けた天然資源関連分野の企業収益の増加等から設備投資が増加したほか、良好な雇用・所得環境を背景に個人消費が増加するなど内需を中心に景気は拡大し、経済成長率は1〜3月期前年同期比3.8%、4〜6月期同4.3%となった。雇用環境も改善し、失業率は、天然資源関連分野を中心とした企業業績の好調を背景に、9月には33年ぶりの低水準である4.2%となった。一方、輸出は、かんばつによる農作物輸出の鈍化や、天然資源関連の港湾設備といった輸送インフラの整備が後手に回ったことなどから鈍化した。07年後半は、引き続き堅調な個人消費や設備投資等の内需が景気をけん引すると見込まれる。
<2008年の経済見通し>
2008年の経済成長率は、3%台半ば程度になる見込みである(政府見通し3.8%(07/08年度)、民間機関22社の平均3.4%(07年10月時点))。一部で金融引締めの影響を受けつつも、引き続き、民間企業の設備投資や、良好な雇用・所得環境の下で個人消費が堅調に推移すると見込まれる。一方、政府は06年に続きかんばつが農作物生産や輸出に与える影響を懸念しており、07/08年度の冬穀物主要3品目(小麦、大麦、菜種)の生産見通しを、大規模なかんばつで減産した06/07年度との比較では増加するものの、過去5か年平均生産量と比較すると半分以下にとどまるとしている。
また、下方リスクとしては、労働需給のひっ迫を背景とした労働コストの上昇や国際商品価格の上昇等による物価上昇の影響が挙げられる。
<財政金融政策の動向>
財政収支は、9.8億豪ドル(GDP比0.1%)の赤字となった01/02年度を除いて、97/98年度以降黒字で推移している。06/07年度は歳入面では予想を上回る法人税収があり、歳出面では失業給付等の社会給付が見込み額より小さかったことなどから、当初見込み額を上回る172億豪ドル(GDP比1.6%)の黒字となった。07/08年度も148億豪ドル(同1.3%)の黒字を見込んでいる。07/08年度の予算の特徴としては、歳入面では向こう4年間で総額315億豪ドルの所得税の減税、歳出面では教育や輸送インフラ設備の拡充等が挙げられる。
金融政策については、オーストラリア連邦準備銀行(RBA)は、07年8月に続き11月に政策金利(キャッシュレートの誘導目標水準)を0.25%引き上げ、96年以来約11年ぶりの高水準である6.75%とした。RBAは利上げの背景として、金融政策運営の指標としている消費者物価(RBAは基調的な消費者物価として、加重中央値(weighted median)、刈り込み平均値(trimmed mean)及び、価格変動の大きい果物・野菜・自動車燃料を除いた値の三種類を取り上げている。)が前年比3%近傍の上昇となっていること、また、景気拡大の中、設備稼働率の高止まりと労働需給のひっ迫が継続していることなどを挙げ、中期的な物価上昇の抑制のための利上げと説明している。