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第 II 部のポイント

2008年の世界経済は、07年をやや下回る成長が見込まれるが下振れのおそれも

●世界経済(日本に関係の深い29か国・地域)は回復している。これら29か国・地域の07年の経済成長率は06年を下回る3.6%程度と減速が見込まれる。
●08年は07年をやや下回る3.4%程度の成長が見込まれる。これは、アメリカ経済の成長が引き続き緩やかなものにとどまるとともに、高成長を続けるアジアがやや減速し、ヨーロッパでも成長が緩やかになることによる。世界経済全体として景気のリスクは下向きのものが中心であるため、経済成長率はこうした見通しより下振れするおそれもあり、注視が必要である。

1.アメリカ経済は、08年は緩やかな成長が見込まれるものの下振れリスクも

●アメリカ経済は、住宅建設の減少等により、引き続き景気回復が緩やかなものとなっている。07年7〜9月期までの足元2四半期における経済成長率は高くなっているが、国内民間最終需要は引き続き緩やかな伸びとなっており、07年通年では2.1%程度と見込まれる。
●08年は、住宅投資のマイナスの寄与が徐々に縮小していく一方で、政策金利の引き下げが遅行的に現れることなどから、07年をやや上回る2.4%程度の緩やかな成長となることが見込まれる。しかしながら、こうした見通しに対しては、住宅市場の調整の深刻化や金融資本市場におけるさらなる変動の可能性など、実体経済への下方リスクが高まっており、これが現実のものとなる場合には、景気が一層減速するおそれもある。

2.アジア経済は、08年はやや減速する国もあるが、全体として堅調に推移

●アジアでは、ヨーロッパや新興国向け等の輸出が好調に推移しているほか、内需も堅調を維持し、07年の経済成長率は北東アジアで9.0%程度(中国は11.3%程度)、ASEANでは5.8%程度と見込まれ、中国を中心に景気拡大が続いている。
●08年は、中国の経済成長率は10.3%程度と6年連続で二桁の高い成長を維持すると見込まれる。しかし、投資や消費の高い伸びが続けば上振れする可能性があり、また、今後の景気過熱を十分に抑制できない場合には、超過供給の発生等により、中国経済が調整局面を迎え、結果として成長率が減速するおそれがある。アジア経済全体では、世界経済の減速の影響等からやや減速する国もあるものの、引き続き堅調に推移すると見込まれる。

3.ヨーロッパ経済は、08年は成長が緩やかになるが、総じて景気回復が続く

●ヨーロッパでは、07年の経済成長率がユーロ圏で2.6%程度と減速する一方、英国は3.0%程度と前年よりやや高い伸びとなり、総じて内需中心の景気回復が続いている。
●08年の経済成長率は、ユーロ圏で2.1%程度、英国で2.3%程度へといずれも減速し、成長が緩やかになるものの、景気は回復を続ける見通しである。ただし、07年央以降の金融資本市場の変動の影響等により景気は下振れリスクを高めており、注視していく必要がある。

4.世界経済のリスク要因

●以上の中心シナリオに対しては、(1)アメリカ経済の一層の減速、(2)国際金融資本市場のさらなる変動、(3)高騰する原油・各種商品価格全般の継続上昇や高値持続、(4)高成長を続ける中国経済の一段の過熱と調整といった下方リスクがあり、世界経済のリスクは下向きのものが中心である。


第 II 部 世界経済の見通し

 世界経済(日本と関係が深い29か国・地域(1))は回復している。アメリカでは、住宅建設の減少等により引き続き景気回復は緩やかなものとなっている。中国では、経済成長率が2007年1〜9月期前年同期比で11.5%と二桁成長となっており、投資と輸出にけん引された景気拡大が続いている。ヨーロッパでは、ユーロ圏の経済成長率が07年前半に伸びがやや鈍化する一方、英国の成長率は高い伸びが続くなど違いがみられたが、全体としては内需中心の景気回復が続いている。総じて、これら29か国・地域の07年の経済成長率は06年(4.0%)を下回る3.6%程度と減速が見込まれる。世界経済全体として景気のリスクは下向きのものが中心であるため、経済成長率はこうした見通しより下振れするおそれもあり、注視が必要である。
 こうした現状を踏まえ、以下では、08年の世界経済の見通し及び今後のリスクポイントを整理することとしたい。なお、各国別のリスクについては第1章で世界経済見通しと併せて記述し、世界経済全体に波及し得るリスクについては章を改め第2章で記述する。

第1章 2008年の経済見通し

 2008年の世界経済は全体として07年をやや下回る3.4%程度の成長が見込まれている。これは、アメリカ経済の成長が引き続き緩やかなものにとどまるとともに、高成長を続けるアジアがやや減速し、ヨーロッパでも成長が緩やかになることによる。本章では、08年の経済見通しのポイントを地域別に検討する。検討に当たっては民間機関の平均的な見方(10月30日までの公表分(2))を参考とした(第1-1表)


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