第 I 部 第2章のポイント
1.各国の温室効果ガス排出状況と温暖化問題への取組
●世界の2004年時点でのCO2排出量をみると、京都議定書に基づき排出削減を約束している国・地域の構成比は29.3%に過ぎない。さらに、中長期的に、排出削減を約束していないアメリカ、中国、インド等の排出増が続く見通しである。温暖化対策の実効性を高めるには、こうした大量排出国を取り込んでいくことが極めて重要である。 2.各国に広がる排出権取引等の経済的メカニズム
●京都メカニズムによる取引の本格化とEU域内排出権取引制度(EU−ETS)の創設により排出権取引の市場は拡大し、取引量で16億トン、取引額で300億ドルを超える。 3.排出権取引による効率的な排出削減 ●排出権取引制度は、経済全体で排出量削減に要する費用を最小化・効率化することをねらいとする。過去の類例をみると、相当程度の費用削減効果があったとする見解が多い。 4.排出権の配分方法を巡る課題と、競争力、所得分配等への影響
●排出権の初期配分に際し、過去の排出実績等に応じて無償配分すると既存事業者を優遇するなどの問題が生じ得るが、有償配分(オークション)すると競争力への影響が大きくなる。各国では、無償配分を中心とし、段階的に有償の比率を高めていくものが多い。 |
第 I 部 海外経済の動向・政策分析 |
第2章 地球温暖化に取り組む各国の対応
2008年は京都議定書において合意された温室効果ガス削減目標の約束期間(08〜12年)の開始年となる。この約束期間を目前に、各国で地球温暖化への対応が進められているが、国によって対応に大きな差があり、議定書を批准している国においても目標達成に向けて一層の努力が必要と考えられる国が多い。そこで、本章では、各国における温室効果ガスの排出状況と温暖化対策の取組を概観し、特に、京都議定書の目標達成のための重要な手段の一つとして近年ヨーロッパ等で取組が急速に進展している排出権取引等の経済的メカニズムについて、各国の状況を概観し、その効果や留意すべき事項等について考察する。